男性更年期障害(LOH症候群)とは 専門医が10の疑問に答える
「更年期」と言えば女性の不調のイメージがありますが、実は男性にも更年期があるのです。
今回は、男性なら誰もが知っておきたい更年期障害(LOH症候群)について、専門医に聞いていきましょう。
この記事の監修



確かにそうだよな。まだ40代前半で歳ってわけでもなさそうだし。

それ、もしかしたら「男性更年期障害(LOH症候群)」かもしれませんね。

あ、福元先生お久しぶりです!

だ、男性にも更年期があるんですか?

実はそうなんですよ。女性とちがって男性の更年期はまだまだ知られていない所もやっかいなんです。30代で発症する人もいますしね。

え~、俺ももうすぐ30代なんですよ!詳しく教えてください~。
Q1 男性更年期とは?
A.男性更年期障害とは、加齢などで男性ホルモン(テストステロン)が低下し、心身に不調が起こる状態のことです。
LOH(late onset Hypogonadism)症候群とも呼ばれます。日本語で言えば、「遅発性の性腺機能低下症」という意味です。
Q2 男性更年期の症状は?
A.個人差はありますが、精神面と身体面の不調が生じます。そしてそれは生活面での悪影響にも繋がります。
➀精神的症状
イライラ、不安感、抑うつ、集中力の低下など
②身体的症状
倦怠感、疲れやすさ、筋力、性欲低下、勃起障害、発汗、ほてり、睡眠障害、動悸、めまいなど
③社会活動・生活面への影響
仕事に対するモチベーション低下、家族や職場でのトラブルなど

「歳のせい」と言われがちな症状が多いですね。

そう、「歳のせい」で片づけられてしまう。それが男性更年期が周知されない理由でもあるんです。
Q3 男性更年期の原因は?
A.男性ホルモンであるテストステロンの低下です。加齢が最大の要因ですが、他にも睡眠不足や運動不足、食生活の乱れ、ストレスも原因となります。

たしかに、うちの課長は働き過ぎだし、人間関係でもいろいろストレスを抱えてそうだよな。

職場のストレスや過労がストレスとなって発症してしまう人は少なくないですね。
Q4 男性更年期の発症確率は?
A.厚労省の調査では、40代で8.2%、50代で14.3%の男性が、「何かしら日常生活に支障が出る程の更年期症状を抱えている」という結果でした。
もちろん30代以下、60代以上でも更年期症状を抱えている人はいます。

結構な割合でいるんですね。

そうですね。「日常生活に支障が出る程じゃない」という人まで含めると、この割合はもっと高くなります。
Q5 男性更年期が及ぼす影響は?
A.経産省の試算によると、男性更年期による経済損失(欠勤や業務の質低下)は年間約1.2兆円だそうです。
40代、50代という、会社の中でもポジションの高い男性がなってしまうので、経済損失は大きいと言えるでしょう。
個人単位で見ても、今までアクティブだった人が、突然仕事も遊びも手に付かなくなるわけで、これは当人や家族からしたら、人生を揺るがす大きな問題になります。
Q6 男性更年期はなぜあまり知られていない?
A.いくつか理由があります。
-
「歳のせい」で片づけられがち
-
女性と異なり、発症の有無やタイミングに個人差が大ききので一般認識が作られづらい
-
男性は弱みを見せたくない生き物なので、共有や相談が起こりづらい

発症タイミングに個人差があるのは何故なんですか?

良い質問ですね。それは、テストステロンの低下タイミングが人によって異なるからです。

*¹より改変

上のグラフを見てください。女性は閉経のタイミング(45-55歳ごろ)で全ての人でホルモン量が減少するのに対し、男性では30代から低下する人もいれば、70代でも減少が少ない人もいるのです。

女性は同年代で更年期の話がしやすいけど、男性は同年代でも個人差があるから話題にしづらいってことですね。
Q7 男性更年期は自然と治る?
A.男性ホルモンの分泌量が低下し続けるので、基本的に自然回復はしません。
一方女性の場合、閉経に伴い女性ホルモンの分泌量はほぼゼロになり、そこで安定すれば多くの症状は治まります。

ひえ~、一度なったらずっと続くってことか。

だからこそ適切な治療を早めに受けることが大切です。
Q8 男性更年期のチェック方法は?
A.いくつかのセルフチェック法があります。
以下の10項目のうち3個以上、もしくは➀と⑦の両方に当てはまる場合、男性更年期障害の疑いがあります。
男性更年期障害セルフチェック
-
性欲が低下した
-
元気がなくなった気がする
-
体力、もしくは持続力が低下した
-
身長が低くなった
-
毎日の楽しみが減ったように感じる
-
もの悲しい気持ちだ、あるいは怒りっぽい
-
勃起力が低下した
-
運動能力が低下したように感じる
-
夕食後にうたた寝をすることがある
-
最近、仕事がうまくいかない、仕事の能力の低下を感じる
*²より改変
もう少し詳しいチェックには、AMSスコアという方法があります。

医療機関だと、血液検査でより詳細な診断を行います。スコアが高かったり、症状が気になる場合は早めに受診しましょう。
Q9 男性更年期の治療と対策方法は?
A.男性更年期は生活習慣の改善や、ストレスの緩和で予防・対策ができます。症状が出てしまったら、重症度に応じてホルモン補充療法なども検討されます。
生活習慣の改善
- 質の良い睡眠(十分な睡眠時間、就寝と起床時間を一定にするなど)
- バランスの良い食事
- 適度な運動(ウォーキング、軽い筋トレなど)
- 過度な飲酒、喫煙を控える
- 遊びや習い事など、新しい刺激を得る(テストステロンの増加につながる)
ストレス緩和やメンタルヘルス
- 趣味や休息時間を確保し、ストレスを緩和する
- カウンセリング
ホルモン補充療法
- 注射によるテストステロンの補充(専門医の判断による)
サプリメント
- テストステロンの合成や維持に関わる成分(テストフェンなど)

生活習慣の改善やストレス対策は、一般的に推奨されている事ばかりですね。

はい、日頃から心掛けてほしいです。症状が重ければ医療機関での治療となります。
Q10 男性更年期は治せる?
A.適切な治療や生活習慣の改善などで、症状は十分に緩和・改善ができます。
加齢によるホルモン低下は多くの人で起こるので、30代以上の男性は「男性更年期」という言葉を頭の隅に置いておくと、早めの発見・対策ができるでしょう。

男性にも更年期があるって今日初めて知りました。最初は驚いたけど、詳しく聞けて、もし自分に起こったら何とか対処できるような気がします!

良い心掛けですね。男性更年期は知らないと1人で悩み続けることも多いですから、多くの人に適切な知識が行き渡ると良いと思います。

それじゃあ今日早速、課長を飲みに誘って男性更年期について教えてやろうぜ!
【参考/出展元】
*1 日本泌尿器科学会/日本Men’s Health医学会「LOH 症候群診療ガイドライン」検討ワーキング委員会, 加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き, 2007
*2 堀江重郎, LOH症候群, 角川新書, 2021
この記事を書いた人

牛場 栄之 TENGAヘルスケア社員(編集長)
大学・大学院では神経科学を専攻、おとなセイシルでは性科学や性機能学、生理学の分野を主に担当。2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当。
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何か最近、うちの課長元気無くない?覇気が無いというか。