AVがクリエイティブなものだった時代 森林原人インタビュー前編

2025-04-30

 身近にあるようで実は知らない、アダルトビデオ(以下 AV)の世界。

 一部のクレジットカードで成人向けコンテンツの決済停止が話題になったり、韓国や台湾では日本のAV女優や男優が人気を集めたり、時代の潮流にあわせて変化を続けている業界です。

 今回は、そんな激動のAV業界で活躍されてきた森林原人さんに、業界の歴史から韓国AV事情まで語り尽くしていただきました。

 まずは日本のAV史から。

この記事の協力者

協力者:森林原人

森林 原人 AV男優

日本で最も活躍するAV男優の一人。出演本数2万本以上。最難関国立中高一貫男子校を卒業してAV業界に進んだ異例の経歴を持つ。最近は出演業を減らし、性愛に関わる事象の経験、研究、考察を通して、その本質を再定義、発信することに注力している。

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    日本のAV業界の源流は「ポルノ映画の輸入」

    本井 本日はよろしくお願いします!

    森林 お願いします!

    本井 まず、AVの歴史についてお伺いしたいのですが、どのようにして日本のAVは始まったのでしょうか?

    森林 AVについて遡っていくと、国が決めたわけでなくうやむやで始まったんですよ

    本井 そうなんですね。

    森林 まずモザイクがなんでできたかっていうと、戦後アメリカが日本に自分たちの映画を輸出する流れで、ポルノ映画も入れたいとなって。

    それを輸入するとき、日本は「そんなもの(性器が丸見えになっているもの)を世の中に見せちゃいけないから」ってことで、肝心なところにモザイクか黒塗りを入れたんですよ

    日本の人はそれを見て、「ああ、局所を隠せばセックスを映していいんだ」と解釈して、いわゆるAVが生まれたわけです。

    本井 へえ〜!

    森林 その流れで代々木忠さんや村西とおるさんとかがAVを作り出したんですよね。

    国として「モザイクしていればセックスOK」と明文化されたわけでなくて

    ちなみに映倫はAVを映画的芸術コンテンツとして認めていないです。

    なのでAVは独自の審査団体を作っています。

    本井 独自の進化を遂げていったのですね。

    VHSからネットの時代へ。日本のAV発展史

    本井 その後はどのように発展していったのでしょう

    森林 時代によってカラーが変わるんですけどね。

    VHS(家庭用ビデオ)の時代はコンテンツとしての楽しさが許容されていた時代で、テレビでできないことをAVでやろうっていう時代でした。

    本井 へえ!

    森林 60分のビデオのうち最初の55分で原発反対を訴え続けて、最後の5分でセックスしているとか。

    本井 セックスさえしていればAVということですね。

    森林 レンタルビデオだけでなくセルビデオも現れて、DVDの時代になって、どんどんコンテンツの細分化が進んでいって。

    AVというのは抜けなきゃだめだと言われるようになり「おかず」になりましたね

    そうすると、男優は黒子であることが求められるんですよ。

    個性豊かな時代から、没個性のいわゆる「竿師」と呼ばれる感じです。

    本井 竿師、聞いたことがあります!

    森林 80年代のアングラな扱いの竿師たちの中からエンターテイメント的なキャラクターを強めの加藤鷹さんやチョコボール向井さんとかが出てきて。

    おかずであることだけが存在意義になると、個性的な人たちは淘汰され、職人ぽい人が求められる流れですね。

    加藤鷹さんの書籍
    加藤鷹の恋愛奥義 本当に気持ちいい恋愛・SEXをするための70の法則

    本井 そしてネットの時代が来ると。

    森林 ネットが主流になって覇権を握ったのがDMM(合同会社DMM.com)ですね。

    そこでマーケティング重視の傾向が強まって、売れるものを作るということで、女優はどれも同じ、内容も同じような商品ばかりにになってきましたね。

    今AV業界でオリジナリティを追求した作品を生み出しながら売れているいうクリエイターは数えるほどはいないです。

    本井 そうすると、AV監督が最もクリエイティビティを発揮していたのはVHSの時代ですか。

    森林 そうですね、村西とおるさんがいて、代々木忠さんがいて、平野勝之さんのドキュメンタリー作品にはエヴァンゲリオンで有名な庵野秀明さんが帯を書いていますよね。

    そういう人たちがいたのは2000年代初めまでですね。

    村西とおるさんを取り上げた書籍
    全裸監督 村西とおる伝

    本井 森林さんはVHS、DVD、ネットでいうとどの時代を経験されたんですか

    森林 僕はVHSの最後とDVDという感じですね。現場で「今日の作品、どっちですか?」なんて聞いていました。

    最近の規制はクレジットカードが鍵?

    森林 AVにはさまざまな規制がありますが、最近はクレジットカード会社の決済でね、AVの決済が大手のクレカ会社で結構だめになっているんですよ。

    プラットフォームによって決済できるカードが違いますね。

    本井 そうなんですか!

    森林 クレカ会社の言い分としては、レイプや女子高生の制服を使ったコンテンツがあるサイトでは決済させられないとか。

    いま、FANZAに女子高生の制服を着た作品はなくなってきてますよ。

    本井 女子高生の制服ものは、結構多かった印象ありますけどね!

    森林 ないんですよ。

    後は催眠もだめ。同意が取れない状態でしょ

    後はロリもだね。ロリ売りの女優さんは嘆いていますよ。「わたしたちの仕事を奪うな」みたいな。

    本井 今そんなふうに…。

    森林 女子高生の制服と言っても、アイドルのコスチュームならいいらしいですよ

    セーラー服っぽいのあるじゃないですか。

    本井 絶妙なラインですねえ。

    この記事を書いた人

    執筆者:本井はる

    本井 はる TENGA社員(副編集長)

    大学院ではジャーナリズムを専攻し、新聞社の記者を経て、2019年1月にTENGAに入社。現在はTENGA社の国内PR部門を統括している。

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