鈴木えみさんと語る「性教育の輪を広げよう」
TENGAヘルスケアが運営する10代向け性教育メディア「セイシル」は、2024年12月に5周年を迎えることを記念し、「ライフステージに寄り添う性教育のあり方」と題したメディア向けのイベントを行いました。(2024年11月28日)
イベントでは、小学生のお子さんがいる鈴木えみさんに、保護者の目線で捉えられている性教育の状況や、実際にご家庭で実施されていることをお話いただきました。
今回は当日のイベントの様子を前編・後編に分けてお届けします。
ありがとうモヤピン~!おとなセイシルもオープンおめでとう!
福田 本日はよろしくお願いします!!
私は、昔から憧れの鈴木えみさんが、性教育の活動をされていることにとても感動しています。今こうして、お話できていることも大変光栄に思っています。
福田さんと鈴木えみさんのトークセッション、ためになるお話がたくさん聞けそうな予感がとても!しています!ドキドキ
<登壇者プロフィール>
鈴木 えみ( すずき・えみ )
1999年に雑誌「SEVENTEEN」の専属モデルとしてデビュー。
モデル、デザイナー、クリエイター、プロダクツプロデューサーとして幅広く活動中。
2024年1月には性教育の普及を目指す団体「Family Heart Talks」を発足。
福田 眞央( ふくだ・まお )
保健体育科教員として勤めた後に大学院に入り、ジェンダー学・性教育を専攻。2021年からTENGAヘルスケアに携わり、10代向け性教育WEBメディア「セイシル」を担当。
性教育活動を始めたのは、家庭単位での性教育の大切さを実感して
福田 さっそくですが、鈴木さんが性教育の活動を始められたキッカケは何ですか?
鈴木さん きっかけは、自分自身が小さい頃に怖い思いや嫌な思いをしたことです。大人になってから振り返ってみると「あれってこういうことだったんだ」と気が付く瞬間が何度かありました。
当時は知識がなかったからわからなかったのですが、その時に知識があれば心のモヤモヤが残らなくて済んだんじゃないかと思い、すごく悔しい気持ちになります。
それから出産して、子育てをしていく中で、「そういう経験(怖い思い・嫌な思い)って絶対にいらないよね」と考えるようになり、うちでは子どもが小さい時から自然と性教育を大切にしてきました。
今、娘は小学校5年生なのですが、小学校である程度(性教育を)勉強するかと思いきや、足りないなと思うことが多いです。学校によって差はあると思うんですけれども…。
子どもたちの成長は早いので、「学校で授業するんじゃないか」と待っているだけでは不十分だと思い、家庭単位での教育がすごく大事だなと考えるようになりました。
SNSで「我が家ではこういう性教育の絵本を使っています」と発信した時にも、反響をいただきました。
皆さんやらなきゃいけないと思っていても、実際何をどう切り出したら良いのか。親世代もきちんと性教育を受けてきていないから、やり方がわからない、困っているという方はすごく多いように思います。
(このような背景があり、)私にも何かできることはないかなと考えて、今年から性教育の話をメインとした親子向けの講演(イベント)活動を始めました。
福田 私も学生時代を振り返って、性教育を親からも学校からも教わったことがほとんどないです!性教育が家庭でも学校でも広がっていくと良いですよね。
性教育は早ければ早いほど良い 年齢や子どもの状況に合わせて行うことが大切
福田 世の中のお母さんお父さん方も、知識がないので性教育が難しいという事情もあると思います。鈴木さんご自身は一児の母として、これからどのような性教育が大切だと感じられていますか。
鈴木さん 他の保護者さんとお話していると、(性教育が)誤解されているなと感じることが多いです。
「うちの子に性教育はまだ早い」「いろいろ早まってしまうのではないか」と思われている方もいる印象です。
でも実は、早くからきちんと性教育を学べた子の方が、(性にまつわるリスクについて)慎重になり、自分が納得するまではきちんとNOが言えるように育ったというデータ*¹もあるんです。
国際セクシュアリティ教育ガイダンスでは、学習(性教育)開始の目標が5歳からと設定されていますが、私は5歳よりももっと、早ければ早いほど良いと考えています。
「教える」という形ではなくても、例えば、小さい時にお着替えをさせる際にも無言で脱がせるのではなく、一言声をかけるとか。子どもが言葉を話し始める前からも、できることはたくさんあると思います。
年齢やその子自身にあわせて性教育をすることが大切だと思います。
国際セクシュアリティガイダンスとは…
国際セクシュアリティ教育ガイダンスは、2009年にユネスコ、国連合同エイズ計画、国連人口基金、ユニセフ、世界保健機関(WHO)が共同で開発した、包括的性教育の国際的な指針。
包括的性教育とは、性にまつわる知識、態度、技能、価値観を身につけることを目的としたカリキュラムに基づく指導方法のことです。
セイシルは親が同世代の子どもの悩みを把握するのにも参考になる
福田 セイシルについてはどんな印象をお持ちですか?
鈴木さん イラストが可愛くて、入り口からしてすごく明るい雰囲気を感じたのと、子どもたちが素直に質問を投げているのに対して、複数の専門家から回答を得られるのが良いと思いました。
一つの回答を正解とするのではなく、いろいろな角度から回答されているので、受け止める側もきちんと理解がしやすいなと。大人が読んでいても勉強になることが多かったです。
また、(セイシルに寄せられた質問を見ていて)「子どもたちって、こういう事が気になっていて、でも聞けなくて困っているんだ」と気付くこともありました。
福田 子どもたちは授業や親から情報を与えられるだけでなく、自分から情報を探していくこともあると思いますが、その際の性教育メディアの役割についてはどのように思いますか。
鈴木さん (今の子どもは)ネットが生まれたときからある世代なので、(アダルトサイトなども含めた性的コンテンツを)避けて通るのは難しいかなと。とはいえ、危ないからと言って取り上げるのではなく、上手な付き合い方をしてほしいと考えています。
(セイシルのような性教育メディアがあることで)子どもたちが適切な情報にたどり着けるようになっていくのは、ありがたいなと思います。
福田 子どもを持つ親にとってもセイシルが役立つことはありますか?
男の子のママと話すと感じますが「家で学校のことをあまり話さなくなって、何に困っているのか、どんな知識を必要としているのか」の把握が難しくなっている印象です。
そんな時に親がセイシルを見て、セイシル内で子どもたちが投げかけている質問から、自分の子どもと同世代の子たちの悩みを知る参考にもなると思います。
性の話をなるべくフラットに話せるように、否定したりはぐらかさない
福田 (子どもたちが)性教育メディアに来てくれるのも嬉しいですが、まずは身近に相談できる大人がいることが一番大切かなと考えています。保護者が子どもに悩みを打ち明けてもらいやすくなるコツってありますか?
鈴木さん とにかく、なんでも話をしてくれる関係性が大事だなと思います。
そのために、例えば(子どもから)性に関する質問が出た時に、こちらがびっくりして、否定的な態度をとったりはぐらかしたりしないように気を付けています。
なるべくフラットに、性のことも話せる関係性がキープできると、いざ何かトラブルに巻き込まれてしまったかもしれない時に、相談しやすくなるんじゃないかと。
一度でも(子どもの性に関する質問に対して)「そんなことまだ知らなくていいんだよ」といった態度をとってしまうと、子どもも敏感に察知して「これって聞いちゃいけないことなんだ」「ダメなことなんだ」と思って、それ以降話してくれなくなってしまうかもしれません。
1日5分でもいいから「話す」時間を作る
鈴木さん 私の家では、話すハードルを下げるために、娘のドライヤー中にその日あった良かったこと、嫌だったことを(お互いに)発表するのを習慣にしています。
先に嫌なことを言って、最後にハッピーなことで締めくくるんです。
私は、小さいことを言うように心がけています。例えば、「今日は躓いてすごく恥ずかしかった」とか。そうすると、娘は「大人でも恥ずかしいとか失敗したりするんだ」と感じて、娘自身の小さなことも話してくれるようになりました。
その会話のなかで、状況を把握するようにしています。ドライヤーじゃなくても、5分でも10分でもそういう時間を設けるのは大切かなと。
福田 ありがとうございます。お聞きして、小さなことからも性教育につながっていくんだなと。今回のテーマである「ライフステージに寄り添う性教育のあり方」についてはどのように思われますか?
鈴木さん 性教育は早ければ早いほど良いと考えています。なぜなら、知識を素直に受け取ってくれるうちに始めるのがベストだと思うからです。とはいえ中学生や高校生だと遅いことはないと思うので、年齢や状況に合わせて繰り返し学んでいけることが理想だと思います。
福田 ありがとうございます。先ほどのお話にもありましたが、国際セクシュアリティ教育ガイダンスを(ご家庭でも)活用されているとのことで。
鈴木さん はい、すごく参考になります。国際的には何歳でどういう内容をやっているのかなど、世界のことを知れると勉強になりますね。
福田 (国際セクシュアリティ教育ガイダンスは、性の知識を身に着けるだけにとどまらず、自分の権利や社会の状態を学ぶことにも繋がるので)どの家庭も参考にしているという在り方が増えていくと良いなと思います。
異なる立場ですが、性教育に携わる者としてこれからも一緒に頑張っていけたらと思います!鈴木えみさん、本日はありがとうございました。
鈴木えみさんからのメッセージ
性教育には、体と心の健康を守るたくさんの大切な知識が含まれていて、年齢問わず大切なことだと思います。
もっともっと子どもたちも、大人たちにも正しい知識が広まっていけるように、本日ご来場いただいている(メディアの)皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
まずは大人たちに届いて、知識のアップデートをしていただきたいなと。小さな変化が始まり、大きな輪につながっていくのではないかと思います。本日はありがとうございました。
鈴木えみさんと娘さんの、毎日のドライヤーでのコミュニケーションとても素敵。なんでも話せる関係性は、日々の積み重ねでもあるんだね。モヤピンも家族になんでも相談できるような関係を続けていきたいな。
会場の様子もお届け 入口にはセイシルの歴史を紹介する展示
2022年に発売したセイシルの書籍も展示。大人でも勉強になると好評です。
教材として使用できるコンドームモデル(アームサイズ)や、セイシルに実際に寄せられたお悩みもご紹介。
これまでの性教育の年表。セイシルのメインキャラクター「モヤパン」のパネルも「かわいい!」と好評でした。
【参照/参考】*1 ユネスコ, 2020年8月10日,国際セクシュアリティ教育ガイダンス【改訂版】──科学的根拠に基づいたアプローチ, 株式会社明石書店,初版, 56ページ, 4.2 科学的根拠のレビューの主な結論
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モヤパン先輩、セイシル5周年おめでとうございます!イベントではこのおとなセイシルも紹介されたんだって!嬉しい~!