フェミニストとは?作家アルテイシアさんに聞く「フェミニズムで生きやすくなる話」(後編)
近年「フェミニスト」や「フェミニズム」という言葉に対して、「男性を攻撃する人」「過激な人」「SNSで怒っている人」…そんなイメージを持っている人も少なくありません。
でも実際は、フェミニズムを学んだことで「生きやすくなった」と話す人もいます。
後半は『だったら、あなたもフェミニストじゃない?』などの著書で知られる作家のアルテイシアさんに、フェミニズムとセックスの関係などを、おとなセイシル編集部がお話を伺いました。
この記事の協力者
アルテイシア 作家
ジェンダー、フェミニズム、性教育、性暴力、毒親などをテーマに執筆、講演や授業を行う。頌栄短期大学非常勤講師。全国各地でジェンダーしゃべり場を企画/出演。 著書『男と女、どっちがずるい? 10代のジェンダー49の疑問と悩み』『だったら、あなたもフェミニストじゃない?』『ヘルジャパンを女が自由に楽しく生き延びる方法』『生きづらくて死にそうだったから、いろいろやってみました』『モヤる言葉、ヤバイ人から心を守る言葉の護身術』他多数。
もっと見るこの記事を書いた人
福田 眞央 TENGAヘルスケア社員
保健体育科教員として勤めた後に大学院に入り、ジェンダー学・性教育を専攻。2021年からTENGAヘルスケアに携わり、10代向け性教育WEBメディア「セイシル」を担当。
この人の記事一覧セックスのモヤモヤもフェミニズムにつながっている
福田:続いて、性行為とフェミニズムの関係について聞いていきます!
アルテイシア:得意分野ですよ!
「嫌と言えない」のは、ベッドの中だけじゃない
福田:おとなセイシルで性の相談を聞いていると「なんとなくモヤモヤする」という人がすごく多いんです。例えば、
- 本当は痛いけど言えない
- 男性主導になってしまう
- 相手に合わせて我慢してしまう
- コンドームをつけてと言えない
みたいな。こういうモヤモヤって、フェミニズムとも関係してるんでしょうか?
アルテイシア:全部つながってると思います。やっぱり、普段の人間関係の中で「言いたいことを言えない人」って多いじゃないですか。
福田:「私が我慢すればいいか」ってなってしまう。
アルテイシア:そうそう。だから、セックスの時だけ急に「痛い」「それ嫌」「もっとこうして」って言えるようになるわけじゃないんですよ。普段から我慢するクセがある人は、ベッドの中でも我慢してしまう。例えば、本当に些細なことでもそうなんですよ。「食器の汚れ落ちてないな」と思っても、「まぁ私が洗い直せばいいか」とか。
福田:めちゃくちゃあります(笑)。言うより、私がちょっと我慢してやればいいかって。
アルテイシア:「ここもうちょっとちゃんと洗ってくれる?」って言えばいいだけなのに、「言ったら機嫌悪くなるかな」とか、「怒らせて面倒かな」とか思って飲み込んでしまう。でも、本来パートナーシップって、普通に言っていい関係じゃないですか。だから、「セックスの問題」だけじゃないんですよね。普段のコミュニケーションが全部つながってる。

「男が攻めて、女が受ける」って誰が決めた?
福田:セックスになると、「男性がリードするもの」みたいな空気もありますよね。
アルテイシア:ありますね。「男が攻めて、女が受ける」みたいな。でも、それもジェンダーの呪いだと思うんですよ。
福田:女性側も「従順でいるべき」みたいな感覚がある気がします。
アルテイシア:ありますあります。だから「痛い」とか「それ嫌」とか、「もっと優しくして」とか言えなくなる。私はよく「マッサージと同じ」って言うんですよ。マッサージだったら「そこ痛い」「もう少し弱く」「そこ気持ちいい」って普通に言うじゃないですか。
福田:確かに!(笑)
アルテイシア:でも、セックスになると急に無言になる(笑)。本来は同じなんですよ。自分の身体なんだから、「痛い」とか「こうしてほしい」を伝えていい。
福田:でも「言いたいけど言えない」という人も本当に多いと思います。
アルテイシア:言いたい事も言えないこんな世の中は、POISON*¹ なんですよ。最初の一歩だけなんです。例えば、「もうちょっと優しくしてほしい」とか、本当に小さいことでいい。そこで逆ギレする相手なら、それはもう危険信号です。一回言えると、そのあとずっと言いやすくなる。だから、本当に最初の一歩だけ頑張ってほしい。
福田:1回言えたらその後も言いやすいですもんね。あとは女性側が「自分は気持ちよくなくても、相手が満足したならいいか」って終わってしまうことも多いですよね。
アルテイシア:ありますよね。でも、本来セックスって、「お互い気持ちよくなるため」にするものじゃないですか。自分も気持ちよくて、相手も気持ちよくて、「楽しかったね」ってなるのが理想。だから「私はどうしたい?」をちゃんと考えていい。

女性も「おもちゃを使いたい」と言っていい
福田:「おもちゃを使ってみたいけど言えない」という女性からの相談もあります。
アルテイシア:そんなに怖がらなくて大丈夫なんですよね。私は「女性の部屋におもちゃがあるのが夢だった」って男性に言われて、驚いたことがあります(笑)
福田:ええ〜!(笑)。でも確かに、結構お互い提案するのに躊躇しているカップルは多いと聞きますね。
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アルテイシア:だから「女のくせに」と思われるんじゃないかって不安な人もいるけど、実際は全然そんなことなかったりする。むしろ「そういう話をちゃんとできる女性のほうがいい」と思ってる男性もたくさんいます。
福田:うんうん!でも「女性がおもちゃを使うのを嫌がる男性」もいるのも事実ですよね。
アルテイシア:それはかなり危険信号ですね。「女性が性的快楽を求めるのはおかしい」って考え方だから。「女は男に喜ばされる側で、自分から快楽を求めるな」っていう価値観なんですよ。だから、そういう反応をする人は、「逃げろ」案件だと思います(笑)
福田:大人のおもちゃは判別にも使えるんですね!
アルテイシア:リトマス試験紙みたいになりますよ。厄除けに部屋に飾っていたら良いんです。普段恥ずかしかったら「美顔器」って書いておけば良い。irohaだったらそんな心配も要らず可愛いですよね。

「コンドームをつけて」が言えない問題
福田:あと、やっぱり相談で多いのが「コンドームをつけて」と言えない問題です。学生から大人まで相談が多いです。
アルテイシア:それは絶対言ったほうがいい。だって、妊娠した時、女性の体は大きく変わるけど、男性の体は1ミリも変わらないから。避妊って「自分の体に責任を持つ」ことなんですよ。だから、「コンドームつけて」は譲っちゃいけない。それを話し合えない関係なら、その関係自体を考えたほうがいいです。
福田:「嫌と言えない」の話と一緒で、普段のコミュニケーションが全部つながっていますね。
アルテイシア:結局、セックスって対話なんですよね。
- 「何が好き?」
- 「どっちがいい?」
- 「痛くない?」
- 「これは嫌?」
- 「こうしたい」
そういうコミュニケーションが大事。私は普通に、「何してほしい?」って聞きます。男性側も「リードしなきゃ」って呪われてる人が多いから。だから、女性側が要望を聞いてあげることで「100%自分がリードしなくても良いんだ」って安心する男性もいる。お互いに、「言っていい」「聞いていい」になっていくのが大事なんだと思います。
フェミニズムに共感できる人の見分け方
福田:セックスって、相手の価値観がすごく出ますね。
アルテイシア:出ますね。性をどう捉えているかって、ジェンダー観とも直結していますから。フェミニズムに共感できるかどうかにも繋がりますね。
モヤモヤできることがフェミニズムの入口
福田:性別によらず、フェミニズムに共感できる人って、素質みたいなものもありますか?
アルテイシア:例えば、ジェンダー差別とか、セクハラとか、性暴力の話をした時に、
- 茶化さない
- めんどくさがらない
- 「フェミかよ」って言わない
- まず、ちゃんと聞く
これができる人はフェミニズムの考え方も受け入れやすいです。
福田:「分からないなりに聞こうとする」みたいな。
アルテイシア:そうそう。最初から完璧に理解している必要はないんですよ。だって、ここはフィンランドでもニュージーランドでもなく、ジェンダー後進国のヘルジャパンなんだから(笑)。日本は、ジェンダー平等について自然に学べる環境がまだまだ少ない社会なんですよね。
福田:世界のジェンダー平等のランキングでも、日本は118位(世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ報告書2025」によると、日本の総合順位は148カ国中118位で、G7:主要7カ国で最下位)ですもんね。
| 順位 | 国名 | ジェンダーギャップ指数 |
| 1 | アイスランド | 0.926 |
| 2 | フィンランド | 0.879 |
| 3 | ノルウェー | 0.863 |
| – | – | – |
| 117 | アンゴラ | 0.668 |
| 118 | 日本 | 0.666 |
| 119 | ブータン | 0.663 |
※0が完全不平等、1が完全平等となり、1に近いほど順位が高いとされている
アルテイシア:だから、最初から100点じゃなくていい。完全に理解できていなくても、「違和感を大事にできること」が大切ですね。「なんかこれ変じゃない?」とか「モヤモヤするな」って感じられる人。
福田:性別に関わらず、モヤモヤできること自体が大事なんですね。
アルテイシア:そう!「女の子なんだからこうしなよ」とか「男なんだから泣くな」とか。そういうのに「あれ?」って思える感覚。その違和感って、フェミニズムの入口なんですよね。
フェミニズムを学んでみようと思えるかどうか
アルテイシア:あとは、日常のモヤモヤから、さらにフェミニズムを「学んでみよう」と思える人が増えるといいですね。実際、イベントとかにも男性も来てくれるんですけど、「本を読んでみたら面白かった」って人がすごく多いんですよ。
福田:アルテイシアさんの本は、フェミニズム初心者にも読みやすくて良いと私も思います!学生でも楽しく学びが得られますよね。
アルテイシア:ありがとうございます!フェミニズムをもう少し深く理解したいと思った時に、本を読んでみたり、それについて誰かと話し合ったりすることは、すごく大事なんですよね。最初は「彼女にすすめられた」とか、「友達に言われた」が入口だったりするんですけど。でも、読んでみたら「え、こんな世界があったんだ」ってハマっていく。

福田:本を読むことで、フェミニズムに興味を持ったり、パートナーの考えを理解するための入口になるんですね。
アルテイシア:そうなんですよ。ちなみに「これ読んでみて」と言われた時に、完璧に理解できるかどうかよりも、そもそも「ちょっと読んでみようかな」と思えるかどうかは大きいと思います。知らないことを知ろうとする姿勢がある人は、対話もできるし、アップデートもできる。そういう人は、フェミニズムへの理解も少しずつ深まっていくんじゃないかなと思います。
福田:このコラムも、誰かとフェミニズムについて話し合うきっかけにしてもらえたら嬉しいです。
フェミニズムに共感できる人の特徴まとめ
-
相手の「NO」をちゃんと受け止める
-
性差別の話を茶化さない
-
相手の話を最後まで聞ける
-
ジェンダーについての理解がある
-
「女らしさ」「男らしさ」を押しつけない

「男らしく」「女らしく」より「自分らしく」
福田:性別を問わず人が集まるような魅力的な人は、本人に自覚があるかどうかはさておき、フェミニズムに共感していることが多い気がしますね。
アルテイシア:特に、女性の友達が多い男性には、フェミニズムに共感できる人が多い気がします。女性を「恋愛や性的な対象」としてだけ見たり、「女性ならこうあるべき」といった役割を求めたりせず、一人の人間として接しているからこそ、性差別に反対する考え方にも自然に共感できるのだと思います。そういう関わり方ができる人は、相手を性別や役割で決めつけずに向き合える。だから結果的に、人間関係も豊かになりやすいんですよね。
福田:なるほど。フェミニズムは、相手を性別の枠にはめずに、一人の人間として関わるための考え方でもあるんですね。そう考えると、人間関係が豊かになること自体が、男性にとっての生きやすさにつながっている気がします。
アルテイシア:それに加えてフェミニズムって、女性だけを自由にするものじゃなくて、男性も自由にするものなんですよ。「男らしく」じゃなくて、「自分らしく」でいい。そこに気づける人は、すごく生きやすくなるんじゃないかな。
福田:最後に一言お願いします!
アルテイシア:私は「Good girls go to heaven,bad girls go everywhere.(良い子は天国へ行ける。でも悪い女の子はどこへでも行ける)」っていう言葉がすごく好きなんです。私なりに解釈すると、良い子でいようとすると、自分が死んじゃうことがある。周りの期待に応えようとして「自分はどうしたい?」を後回しにしてしまう。でもフェミニズムって「自分はどうしたい?」を考えるきっかけになるものなんですよね。「女らしく」「男らしく」じゃなくて「自分らしく」。恋愛でも、セックスでも、結婚でも、仕事でも。周りがどう思うかではなく、自分がどうありたいかを考えられるようになる。それって、自分を生きることなんだと思います。
福田:素敵な言葉ですね。フェミニズムは「自分らしく生きるための視点」ですね。
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「フェミニスト」という言葉に、怖いイメージを持っている人もいるかもしれません。
でも今回のお話を通して見えてきたのは、フェミニズムとは「誰かを攻撃する思想」ではなく、「自分も相手も大切にしながら生きるための視点」だということでした。
恋愛でも、結婚でも、セックスでも、仕事でも、「自分は本当はどうしたいんだろう?」と考えること。そして、お互いに話し合えること。
その積み重ねが、誰かを縛る「呪い」を少しずつほどいていくのかもしれません。

【参考/出典元】
*1 反町隆史(1998)『POISON~言いたい事も言えないこんな世の中は~』[CD MAXI]Mercury
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