セックス依存症かもしれない
今回のお悩み
セックス依存症なのではないか、と悩んでいます。
私は、もともとオナニーやセックスの頻度はそこまで多くありませんでした。ただ、する時はリラックスして臨めていて、適度に楽しめていたと思います。
しかし、30代に入り責任が増えたストレスで癒しを求めるからなのか、性的なことをする頻度が高くなりました。
帰宅したらほぼ毎日AVを見てオナニーし、休みの日には1日中セックスをしてしまっています。しかも相手はその時々でいろいろな人とです。性病には気をつけていますが、これはセックス依存症なのではないかと不安に思っています。
オナニーやセックスをしても、以前のように「楽しい」や「気分転換になった」という感情が得られず、虚しい気持ちになります。
以前のように健康的にオナニーやセックスを楽しみたいです。
何か対処方法はありますか?
(32歳 男性)
専門家からの回答
専門家からの回答
古村 健太郎 弘前大学人文社会科学部准教授
恋愛関係や夫婦関係の消極的な維持、失恋、恋人間の暴力など親密関係について研究している。また、自治体や学校と協働し、自分たちの遊び場を自分たちで作る活動にも挑戦中。
関連記事を見る依存とは何か
学術的には「セックス依存症」という診断は確立していませんが、強迫的な性行動の問題は研究され、他の依存症との共通点が指摘されています。ここでは、その共通点に注目していきたいと思います。
依存【嗜癖(しへき)】とは、物質の摂取(アルコールやタバコなど)や特定の行動(ギャンブルなど)を繰り返すうちに、その使用や行動を自分でコントロールすることが難しくなり、日常生活や社会生活に支障をきたす状態を指します。
依存が生まれる理由と仕組
多くの場合、これらの行動を始めたばかりの頃は気持ち良さを伴うものです。
しかし、繰り返されるうちに、不快な気持ちを和らげる手段としての役割が強くなっていきます。それが習慣化し、依存的なパターンになります。
つまり、「不快な気持ちなどの引き金→行動→一時的な安心や快感」という流れが繰り返されることで習慣化されていきます。
さらに、依存的なパターンになると、今までと同じ効果を得るためには、より頻繁で、より強い、新しい刺激が必要になることもあります。
相談者の場合、リラックスや楽しみを生み出していたオナニーやセックスが、責任増加やストレスを和らげる手段になっているという点で、依存に似たパターンが生じていると感じます。
さらに、その効果を高めるために、頻度の増加や異なる相手とのセックスへと移行している可能性も考えられます。
性行動と価値観がズレると虚しさを感じやすい
苦しみを生み出す要因の一つは、自分の性行動と、「こうあるべき」といった自分の価値観がズレている状態です。この「ズレ」が大きいほど、「自分は依存症なのでは」と感じやすく、同時に、虚しさや辛さといった感情を抱きやすくなります。
相談者の「以前は楽しめていたのに今は虚しい」という感覚からは、行動と自分のあるべき姿とのズレが生じていることが推察されます。
専門家への相談以外の対処法は主に3つ
ここでは専門家に相談する以外に、3つの対処法を提案してみたいと思います。
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記録する
依存的なパターンになった行動には、その行動を引き起こす「引き金」が存在します。
まずは、いつ、どこで、どのようにオナニーやセックスをしたくなるのか、実際にしたのかについて、自分自身を観察してみてはいかがでしょうか。
もしかしたら「帰宅後、仕事の考え事をしているとき」が引き金になっているかもしれません。
引き金が見えてきたら、次のステップとして、オナニーやセックスの代わりにできる、すぐにできそうな小さな行動(シャワーを浴びるなど)を試してみましょう。
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根本のストレスの解消を目指す
依存的なパターンになった行動には、何らかのストレスを和らげる役割があります。
そのため、仕事のストレスや責任感を根本的に解決する必要があります。
難しいことであると承知していますが、周囲に相談する、産業カウンセラーに相談するなどをしながら、少しずつストレスを取り除いていく必要があります。
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オナニーやセックスを良いものと実感
オナニーやセックスには否定的な考え方がつきまといやすいです。
しかし、オナニーは気持ち良いものですし、互いに合意したセックスによるコミュニケーションは、例え一夜限りであったとしても、大切なつながりになることもあります。
オナニーやセックスは悪くないと思えると、虚しさを軽減するかもしれません。
専門家からの回答
頻度が増えた=依存症ではない
まず大切なのは、頻度が増えたことが必ずしも依存症ではないということです。
ただし、「やめたいのにやめられない」「気分転換にならず虚しさが残る」「仕事や人間関係に影響が出ている」「リスクを承知で繰り返してしまう」、こうした状態が続く場合は自分自身のコントロールが難しくなっているサインと考えられます。
コントロールが難しくなることで痴漢や盗撮などの社会的に問題につながる行為は「性嗜好障害」、性的な行為の影響で日常生活に支障が出る場合は「強迫性性行動症」につながる場合もあります。
ただし、あなたは健康的に楽しみたいという思いを持っているので、まだ改善できる可能性があります。
まずは性的な快楽から距離を置くところから
ストレスフルな30歳代は、報酬系ホルモンと呼ばれるドーパミンに頼りがちになります。
特に性的な快楽はドーパミンが多く分泌され、回数を重ねることで緊張を下げる習慣につながりやすくなります。その結果、性的な快感よりも虚無感が残ることが出てきます。
対処方法としては、性的な快楽から距離を置くことが必要です。AVを見る頻度を毎日から隔日にする、休みの日にはスマホを触らない時間を作ることはまず初めにできることです。
記録を残して振り返り、他に熱中できるものを探す
ただし、急に全てを変えることはできないと思います。ですので、毎日の性的な行為の回数などを記録し、自分自身の行動を振り返ってください。
メモに残すことで自分自身の行動を可視化できるようになります。そして、スポーツや映画鑑賞、マンガなど何か熱中できることを見つけてください。さらに好きな相手を見つけ恋愛して下さい。
セックスは大切な愛情表現と考える
パートナーは性的なことをするためだけの相手ではありません。性的な行為は親密さの延長線上の最大のスキンシップです。
セックスは単なるスポーツでも快楽を追及するだけの行為でもありません。本来は大切なパートナーと共有し合う、大切な愛情表現のひとつです。
本来のセックスを体験していないという可能性もあるかもしれません。恋愛を通じてパートナーの大切さを理解するということを、考えてみるのも良いのではないでしょうか。
健康的に楽しめていた頃との違いは、楽しさより義務感や現実からの逃避が強くなっている点かもしれません。性をストレス処理の唯一の手段にしないこと、そして「自分は何から逃げたいのか」を言語化することが回復への鍵だと思います。
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病名では強迫的性行動症といいます
セックス依存症(以下:性依存症)ではないかと悩まれているのですね。
まず前提として、セックス依存症という病名はなく正式には「強迫的性行動症」といいます。
症状の特徴は、日常生活に大きな支障をきたすとわかっていても、セックスだけでなく強迫的な自慰行為や性風俗通い、長時間のポルノ視聴などの性的な満足を得るための行為がやめられなくなってしまうようになります。
なかには、配偶者以外の不特定多数との性行為、痴漢や盗撮、のぞき、不同意性交(レイプ)などの犯罪行為を繰り返してしまう場合もあります。
性依存症セルフチェックリストで確認を
気になる人は、私が考案した「性依存症セルフチェックリスト」をやってみて下さい。
一つでも当てはまれば性依存症の初期症状と考えられますし、該当項目が多いほど性依存症の可能性が高いといえます。しかし、可能性が高いことですぐに専門治療が必要ということではありません。
あなたの性的な思考や行動に関して、誰かの助けが必要と感じる。
性的な思考や行動をしているときのほうがリラックスできる。
セックスや性的刺激によって、物事の優先順位がしばしば逆転する。
自分自身の性的な思考や行動で制限したいと感じることがある。
なにかに耐えられず、不安や孤独感をやわらげるためにセックスを用いる。
セックスの後、罪悪感や自責の念を抱いて落ち込む。
性的行動に時間をとられ、家族や身近な人をおろそかにしている。
最近、性的行動のせいで集中力や仕事の能率が落ちている。
次から次へと性的関係を持つ相手を変えている。
性的行動を隠すため、嘘をつくことがよくある。
※『セックス依存症』(斉藤章佳著/幻冬舎新書)より抜粋
性依存症と性欲の強さに必ずしも相関はない
性依存症の人は、強すぎる性欲が抑えきれないことが原因と思われがちですが、性依存症と性欲の強さには必ずしも相関関係はありません。
性依存症に悩む人の背景には、幼少期に家族からの虐待、ネグレクト、暴力、家族の嗜癖問題(アルコールや薬物、ギャンブルによる多額の借金など)、親の浮気・不倫・早期の死別離別、貧困問題といった「小児期逆境体験(ACE:Adverse Childhood Experiences)」を複数経験しており、安心安全な環境で親から十分な注目や愛情を受けられなかった経験をしていることが多くあります。
子どもの頃の複数からなる逆境的体験は、生涯にわたり心身の健康に悪影響を与える可能性があります。
その結果、自尊感情の傷つき、自己肯定感の低さや過剰な見捨てられ不安、怒りや衝動性のコントロールの困難さ、慢性的な空虚感、自殺傾向と自傷癖など、その人の生活全般に影響が表出してしまうケースが見られるのです。
性依存症は完治ではなく「しらふ」を保つことを目標に
仮にあなたが性依存症であれば、それは完治が難しい病です。そのため治療の目標は、やめることではなく、「性的なしらふ」をどのように維持していくのかがポイントです。
「性的なしらふ」を保つためには、定期的なメンテナンスや、一緒に伴走してくれる支援者や仲間の存在が欠かせません。
たとえ性的な問題行動が再発した日があっても、それを仲間にカミングアウトすることで、自分が再び行動化してしまうことを避けることにつながります。
また、自分より回復が進んでいる仲間がいる場合は、将来自分が目指すべきロールモデルにもなります。もし、困っていたら専門医療機関に相談するか、性依存症の自助グループ(SA・SCA)に参加してみましょう。
関連書籍
『セックス依存症』(斉藤章佳著/幻冬舎新書)
回答者 斉藤章佳さんの著書。紹介した性依存症セルフチェックリストの他、実例をもとに依存症について詳しく解説しています。
公式サイトで見る