中絶ってどんなこと
今回のお悩み
私は出産経験はないのですが、友人が妊娠中のつわりがあまりにも酷くて、中絶を考えたという話を聞きました。
選択肢として考えたことはありませんでしたが、中絶について知りたいです。痛みがあったり、将来妊娠が難しくなる可能性もあるのでしょうか。(30代 女性)
専門家からの回答

染矢 明日香 NPO法人ピルコン理事長
NPO法人ピルコン理事長。子ども向け「セイシル」でもセイシルアドバイザーとして活躍。性の健康の啓発とセクシュアリティ教育(包括的性教育)について発信を行う。
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中絶は体だけなく心にも影響がある
痛みの感じ方は人それぞれ個人差が大きいように思います。
また、体だけではなく心への影響もあります。中絶はどんな処置なのかを知っておくと、不安の軽減にもつながると思います。
痛みの感じ方は人それぞれ
2023年の調査によると、中絶に伴う重篤な合併症の発生率は、0.317%でした。妊娠12週未満の初期中絶の場合は麻酔手術のため、痛みをほとんど感じなかった人もいれば、子宮口を広げる前の処置や、麻酔があまりきかず手術での痛みを感じる人もいます。
やわらかい素材の使い捨ての専用器具を使って子宮内を吸いだすMVA法(手動真空吸引法)という方法は、電動の機器を使う電動吸引法や、子宮内をかきだす掻爬(そうは)法より体への負担や安全性がより高いと言われています。
また、妊娠12週以降は人工的に死産をする中期中絶手術となり、より心身への負担は大きくなります。なお、妊娠22週以降は、いかなる理由があっても中絶はできません。
妊娠9週0日までに限り、より体への負担が少ない「飲む中絶薬」も一部の産婦人科で相談が可能です。(中絶薬は2023年に日本で承認されました。)
2種類の薬を順番に服用し、中絶が完了するまで約2~3日かかります。
2つ目の薬を飲んでから9割以上が24時間以内に中絶が確認できますが、もし完了しない場合は追加で手術が必要となります。
副作用として6割ほどに一時的な腹痛やおう吐があり、また0.8%に重度の子宮出血などの重篤なものが報告されています。
中絶をするのではあれば、早い時期の方が負担は少ないです。処置の後は無理せず安静に過ごすことがおすすめされます。
ただ、「中絶は痛いのが当たり前」「自業自得だから痛くても仕方ない」と思っている人がいたら、それは違うと思います。中絶は罰ではなく、医療行為です。
一度の手術で不妊になることはほとんどない
思いがけない妊娠は気をつけていたとしても起こることがありますし、また望んだ妊娠だったとしても産むことが難しい状況に変わることがあります。
「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」といって、全ての人がいつ、何人子どもを産むか、産まないかを決められ、そのために必要なサービスを受けられることは権利なのです。
そして、一度の中絶手術で不妊になるということは今はほとんどありませんが、何度も中絶を繰り返すことでそのリスクや影響が大きくなる可能性があります。
もし中絶をした後の痛みや心のケアで悩むことがあったら、信頼できる婦人科やカウンセラーに相談することもできることも知っておいてくださいね。