「SとX」多田基生先生インタビュー ドラマ化への想いとTENGAオフィスで得た新しい視点
性の悩みに正面から向き合い、多くの読者の心を揺さぶってきた漫画「SとX」。
待望の映像化(ドラマ化)を記念し、今回は、著者の多田基生先生にTENGAのオフィスでインタビューを行いました。
作品の誕生秘話や制作の裏側、作品に込めた想いをじっくり伺ったインタビューに加え、TENGA・irohaのアイテムを手に取りながら盛り上がった、オフィスでの特別エピソードもたっぷりお届けします。
多田 基生(ただ・きせい)先生

漫画家。2021年、講談社「イブニング」にて、日本ではまだ珍しいセックスセラピストを題材にした漫画「SとX ~セラピスト霜鳥壱人の告白~」(全3巻)を連載。
続編「SとX セラピスト霜鳥壱人の診察室」は講談社「モーニング・ツー」で連載中。
また、「真逆な2人はどうにもデキない。」の作中では「iroha」を紹介。
この記事を書いた人
綿来 美紀 TENGAヘルスケア社員(ディレクター)
大学時代よりウェブメディアのライターとして活動。 TENGAヘルスケア、iroha関連コンテンツサイトのSEO担当者として2024年2月に入社。
この人の記事一覧なぜ、セックスセラピストだったのか「SとX」誕生のきっかけ
1巻書影-1.jpg)
綿来 日本ではまだ認知の薄い「セックスセラピスト」を題材に選ばれた理由をぜひ伺いたいです。
多田先生 一番最初にこの作品の構想をメモしたのは2019年でした。
当時、Netflixのイギリスドラマ「セックス・エデュケーション」という作品と出会ったことと、日本性科学会が出版している「セックス・セラピー入門」*(日本性科学会出版)を読んだことが大きなきっかけです。
*性の悩み・疾患・機能障害について、基礎知識から治療・カウンセリングなどを解説する入門書
多田先生 人間の性は生殖だけが目的ではなく、心身の健康や人間関係にも関わるものだと知って、とても印象に残りました。
綿来 セックス・エデュケーションは、高校生のリアルな性の悩みが扱われていて、日本でも大きな反響がありましたよね。多田先生の中で、印象に残っているシーンはありますか?
多田先生 セックスは一方的なものではなく、相手と話しながら成り立っていくものだと描かれているところが印象に残っています。
「男らしさ」「女らしさ」といった、ジェンダーバイアスに疑問を投げかけている点や、セクシュアルマイノリティが特別な存在ではなく、身近な人として描かれているところも好きです。私自身、そういうシーンに救われましたし、漫画の中で表現したいと思いました。
綿来 セックス・セラピー入門の方はいかがですか?

多田先生 セックスセラピストというお仕事があることを知りましたね。これまでも性にまつわる悩みや傷つきは身近なものなのに、安心して相談できる場所や語られる機会が少ないと感じていました。
私自身も昔から、性に対して嫌悪感と興味の両方を抱えていて、「どうしてこんなに複雑なんだろう」と考えることがよくありました。
そんな中で、セックスセラピストという仕事や、こういう職業があること自体を知ってもらうきっかけにもなるのではないか?と思い、この題材を選びました。
綿来 ご自身の体験や葛藤が、きっかけにあるんですね。「嫌悪感と興味」について、差し支えない範囲でお聞かせいただけますか?
多田先生 子どもの頃、インターネットなどで目にした漫画の性的描写の中に、レイプのようなシーンや痛々しい行為があり、ショックを受けたんです。最初に触れた「エロ」がそうした過激なものだったため、それがトラウマや嫌悪感に繋がっていたのかなと。
綿来 私も子どもの頃、友達に見せてもらった漫画で衝撃を受けた記憶があります。最初に触れた体験って、本当に大きく影響しますよね。
「正解を決めつけない」デリケートな題材への取材について
綿来 「SとX」では非常にセンシティブなテーマが多数描かれています。取材や作品制作はどのように進められているのでしょうか。
多田先生 専門書や論文を読んだり、医療関係者の方々へ実際に取材を行いながら進めています。デリケートな題材だからこそ、単一の情報に偏らず、できるだけ複数の情報源に触れることを徹底しています。
また、性に関する悩みは本当に人それぞれなので、これが正解だと決めつけるような描き方は避けたいと思っています。
綿来 「SとX」では、セックスレスや挿入障害、依存症など多岐にわたるテーマが描かれていますが、各エピソードの題材(テーマ)はどのように選定されたのでしょうか?
多田先生 セックスレスのように悩んでいる方が多いものは、作品でも取り上げたいと思いました。挿入障害や依存症など、あまり知られていなくても当事者にとっては切実な問題もあります。そうした中から、担当編集者と相談しながら、各エピソードで扱うテーマを決めていきました。
綿来 続編の「SとX セラピスト霜鳥壱人の診察室」では、神奈川レディースクリニックの山本先生(医師・セックスカウンセラー)にも取材されたそうですね!印象的なエピソードはありましたか?

多田先生 山本先生から伺った「性行為の仕方そのものが分からず悩んでいるカップルがいる」というお話がとても衝撃的でした。AVなどの映像表現(見映えの良い体勢)ばかりが先行し、「お互いに抱き合いながら行う」というごく基本的なことを知らないまま大人になる方もいるそうです。
先生が「後ろから挿入してみてください」と助言しても、「どういうことですか?」と本当に分からず戸惑われる患者さんもいらっしゃると聞き、性教育の不足を痛感しました。
綿来 私も山本先生にインタビューさせていただいた際、「腟性交が痛いからアナルに挿入している」という相談者さんの話を聞いて驚いたことがあります。正しい知識を得られる機会って、本当に大切ですよね。
↓山本先生にインタビューをしている記事は下記でご覧いただけます。
登場人物たちに込めた「誰もが悩んでいていい」というメッセージ
綿来 「SとX」の登場人物たちはみんな人間味がありとても魅力的です。悩みを抱える登場人物も多い中で、キャラクター作りで意識された点はありますか?
多田先生 性に対して前向きな人もいれば、トラウマを抱えている人もいますし、登場人物たちの悩みの内容もさまざまにしようと思いました。
例えば主人公の霜鳥は、セックスセラピストでありながら、自身も性的なトラウマを抱えています。

左に描かれているのが主人公 霜鳥
多田先生 登場人物それぞれが違う立場や価値観を持ち、それぞれの悩みを抱えていること。「性の悩みは誰もが何らかの形で抱え、向き合っているものなんだ」ということを伝えられたらと思っています。
また、性は生殖や欲求だけではなく、他者との関係やその人の尊厳にも深く関わるものだと思っています。一方で、性は人によって感じ方も価値観も違います。だからこそ、「こうあるべき」と決めつけるのではなく、それぞれの考え方や悩みがあっていいということを描きたいと思っています。
綿来 「おとなセイシル」でも、読者の方が一つの正解に縛られず、自分に合った考え方や解決のヒントを見つけられるような発信を心がけているので、先生の想いに深く頷いてしまいました。
ちなみに「SとX」の主人公(霜鳥壱人)にはモデルとなった実際の先生がいらっしゃるんですか?
多田先生 実は特定のモデルはいないんです。完全にオリジナルですね。
綿来 実際のセックスセラピストの方も高齢化が進んでいて、若い専門家が少ない現状もあるので、主人公の存在はとても新鮮でした。もし多田先生ご自身が、霜鳥さんのような立場・人柄のセックスセラピストに出会えたら、話したいことや相談したいことはありますか?
多田先生 性をテーマにした漫画を描いている身ですが、普段、性に対して、どうしても割り切れない気持ちや抵抗感が残ることがあるので、そうした感覚とどう付き合っていけばいいのか、霜鳥先生に相談してみたいです。
「SとX」ドラマ化とセックスセラピストを巡るリアル
綿来 改めて、この度の映像化おめでとうございます!決定した際のお気持ちや、楽しみにされている点を教えてください。
中島健人主演
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) July 28, 2026
Netflixシリーズ『SとX』
8/20 配信開始
診察室に座る
中島健人演じる霜鳥先生の
優しい眼差しが印象的な
キーアート公開!
すべての悩める大人に寄り添う、
ヒューマン・ラブストーリー#SとX pic.twitter.com/mV0XalvRO9
多田先生 とても驚きました!テーマ的に映像化は難しいと思っていたので、本当にありがたいです。映画やドラマを観るのが好きなので、自分の作品が映像になること自体が素直に嬉しいですし、楽しみですね。
綿来 多くの方が見ることになるかと思います。その際に期待していることはありますか?
多田先生 実際の俳優さんが演じることで、登場人物の葛藤や迷いがより身近に感じられる作品になるのではと期待しています。性の悩みを抱えたとき、「どこに相談すればいいのか分からない」という声は本当に多いと聞きますので、性に悩んでいる方にはもちろん、「自分には関係ないかな」と思っている方にもいつか役立つかもしれない知識としてぜひ届いてほしいですね。
綿来 SとXのドラマ化をきっかけにセックスセラピストという職業を知る方は非常に多いと思いますが、一方で「女性用風俗(女風)のセラピストさん」と混同されてしまうケースも多いと耳にします。
多田先生 映像化が決まった際も、石田衣良さんの「娼年」のような世界観をイメージされた方がいらっしゃったみたいで。医療やメンタルケアの観点から「性の悩みに寄り添ってくれる専門家」という本来の役割が正しく広がっていくと良いなと感じています。
綿来 本当にそうですよね。先生は、もう完成したドラマをご覧になりましたか?
多田先生 見ました!センシティブなシーンや、性加害の描写もあるため注意は必要ですが、ご家族で見ていただけるような優しい雰囲気に仕上がっていて、とても見やすかったですよ。
綿来 キャストの方々も豪華ですし、本当に楽しみです。「SとX」をきっかけに、正しい性の相談先や「セックスセラピスト」という存在への理解が広がっていくことを願っています!
【特別編】多田先生がTENGAオフィスにご来社!アイテムを手に取って感じた新たな発見

インタビュー後、多田先生にTENGAの展示コーナーをご覧いただきました!
日頃から作品のために深い取材を重ねられている多田先生。TENGAやirohaのプロダクトを前に、目を輝かせながらひとつひとつ手に取り、興味深く質問してくださいました。

多田先生 コレはどういうアイテムですか?
綿来 ふわふわ感を追求した「TENGA Puffy(テンガ パフィー)」というアイテムです。ぜひ、中も触ってみてください!

多田先生 たしかに、ふわふわですね!!!

irohaのアイテムコーナーでも手に取りながら、「コレは持っています!」とお気に入りのアイテムを教えてくださいました。
また「この肌当たりの優しさは、挿入時の不安を和らげるクッションになりますね」「なるほど、刺激のバリエーションがあると自分に合った心地よさが見つけやすいですね」と、作品で描かれている「悩みに寄り添う視点」そのままに、真剣な眼差しでアイテムを観察される多田先生の姿がとても印象的でした。
「SとX」作品情報・ドラマ公開情報
「SとX」に関する情報を紹介します。
漫画「SとX ~セラピスト霜鳥壱人の告白~」
講談社「イブニング」にて連載された「SとX ~セラピスト霜鳥壱人の告白~」。
舞台は、性にまつわる悩みを専門に扱う「すずしろノースクリニック」。
主人公のセックスセラピスト・霜鳥壱人のもとには、セックスレス、ED、挿入障害など、さまざまな葛藤を抱えた患者たちが訪れます。
単に「テクニック」や「解決策」を提示するのではなく、登場人物一人ひとりの心やトラウマ、パートナーとの関係性に真摯に向き合っていくストーリーは、読む人の傷つきを優しく癒やしてくれます。
1巻書影-1.jpg)

SとX ~セラピスト霜鳥壱人の告白~ 2巻

↓試し読みはこちらから!
漫画「SとX セラピスト霜鳥壱人の診察室」
前作「SとX ~セラピスト霜鳥壱人の告白~」に続く待望のシリーズ続編。
セックスセラピストの霜鳥壱人が、心やからだの悩みを抱える患者さんたちへさらに深く寄り添っていきます。
今作では、性教育の不足や知識の不一致から生じるすれ違い、性交時の痛みや違和感、家族やパートナーとの関係性など、現代を生きる私たちが直面しやすい、より多様でリアルなテーマが描かれています。


↓試し読みはこちらから!
Netflixシリーズ「SとX」
多くの読者の心に寄り添い、性やからだの悩みに真摯に向き合ってきた話題作「SとX」が、ついに実写ドラマ化!2026年8月20日(木)よりNetflixにて世界独占配信が決定いたしました。
主人公のセックスセラピスト・霜鳥壱人役を演じるのは、中島健人さん。繊細な心身のトラウマや悩みを抱える患者たちにやさしく寄り添い、真面目に向き合うセラピスト像を魅力的に表現しています。
「性の悩みは、誰もが抱えていていいもの」。観終わったあとに自分の心や体を少し愛おしく思えるような、やさしさと気づきに満ちた作品です。漫画とあわせて、ぜひ映像でもお楽しみください!
主演:中島健人 x ヒロイン:新木優子
— Netflix Japan | ネットフリックス (@NetflixJP) August 19, 2026
Netflixシリーズ『SとX』
本日16時配信スタート!
冒頭映像大公開!
精神科医 兼 セックスセラピスト
霜鳥壱人(しもとり・いちと)のクリニックには
誰にも打ち明けられない
性の悩みを抱えた人々が訪れる
偏見の視線にさらされながらも… pic.twitter.com/HM6AmDnZVo
<作品情報>
主演:中島健人
原作:多田基生『SとX ~セラピスト霜鳥壱人の告白~』(講談社「モーニング」刊)
監督:草野翔吾
シリーズ構成・脚本:吉田智子
脚本:草野翔吾 / 松島瑠璃子 / ばばたくみ
プロデューサー:瀬戸麻理子、齋藤大輔
プロダクションプロデューサー:押田興将
制作プロダクション:オフィス・シロウズ
企画・製作:Netflix
SとXが教えてくれる「悩んでいい」という安心感
作品作りに対してどこまでも誠実で、そして新しい知識やプロダクトにも柔軟な興味を持って優しく接してくださった多田先生。
先生のその温かい人柄と探求心こそが、「SとX」という作品が多くの人の傷つきを癒やし、寄り添い続ける理由なのだと実感した一日でした。
ドラマ化によって、さらに多くの方へその優しいメッセージが届くことを編集部一同、心より応援しております!
記事をシェアする