性感染症・性病はじめの一歩 人ごとじゃない、素人の自己診断はNG
性病(正式名称:性感染症)は、私たちの健康と生活に大きな影響を与える重要な問題です。しかし、多くの人がそのリスクや予防法について、十分な知識を持っていないのが現状です。
今回は、性感染症の基本的な情報から予防法、症状、相談窓口まで、幅広く紹介します。性感染症に関する正しい知識を身につけて、自分自身や大切な人を守るための第一歩を踏み出しましょう。
注)「ちつ」の解剖学的に正しい表記は「腟」ですが、この記事では一般的な表記である「膣」を使用します。
この記事の監修
(ピコピコ)忙しいんだけど、なーに。うわぁ!負けたぁ!
携帯ゲームしててよく言うよ。おれのちんこやばいんだ、性病かもしれないんだよ。
あ、それって…不治の病!だいすけ、今までありがとね。
待てぃ!不治の病とはいつの時代でござるか!医学の進歩によって、現代では治療さえ受ければ殆どの性感染症は治るでござる。
よかった〜、じゃあ安心だね。
安心するのも早いでござる。性感染症という敵を知り、己を知れば、百戦して殆(あや)うからず。
どういう意味?
さぁ?とりあえず敵のことを教えてくれ〜!
性感染症とは?
まずは我々の敵、性感染症に関する基本的な知識を身につけるでござる!
性感染症は不治の病?
性感染症は、おもに性行為(セックスなど)によって感染する病気の総称です。
細菌やウイルスなどが性器・口腔・肛門などから体内に入り込みます。
一部のケースを除いてほとんどが不治の病ではありません。
完治が難しい性感染症(HIVやHPVなど)もありますが、薬で管理することで健康な生活を送ることができます。
噂に惑わされず、まずは定期的な検査と予防策を講じることが重要です。
セックスだけでなく血液や母乳を通してうつる場合も
性感染症は、性行為以外でも感染することがあります。
例えば、血液や母乳、皮膚接触によって広がることもあります。感染経路の理解は、適切な予防のためにも大切です。
性感染症の種類と症状 無症状に注意!
性感染症って高校生のとき、テスト前に名前だけ丸暗記しただけだったよ。もっとちゃんと話を聞いとけばよかったな…。
モヤピンもそんな感じ。しかも名前すらもう覚えてないかも。
うむ。セイ星の妖精としてはとんでもないことだが、人間たちはそういう人が多いでござるな。次は性感染症の種類と症状を詳しく紹介するでござる!
1.性器クラミジア感染症
クラミジア(正式名称:性器クラミジア感染症)は日本で最も一般的な性感染症で、特に若年層に多く見られます。
無症状のことが多く、感染に気づかないまま放置されることが多いのですが、不妊症や骨盤内感染症の原因になることもあります。
女性の体の症状 | 異常な膣分泌物、排尿時の痛み、性交時の痛み、下腹部痛(無症状なことが多い) |
男性の体の症状 | 尿道からの異常な分泌物(膿)、排尿時の痛み、頻尿、睾丸の痛みや腫れ |
潜伏期間 | 約1~3週間 |
感染経路 | 性行為(膣、肛門、口) |
治療方法 | 抗生物質(アジスロマイシンやドキシサイクリン)の服用 |
2.淋菌感染症
淋菌感染症は性器からの異常な分泌物や排尿時の痛みを引き起こします。
クラミジアと併発しやすいと言われています。
女性の体の症状 | 異常な膣分泌物、排尿時の痛み、性交時の痛み、下腹部痛、骨盤内炎症性疾患(PID)を引き起こすこともある(無症状なことが多い) |
男性の体の症状 | 尿道からの異常な分泌物(膿)、排尿時の痛み、頻尿、睾丸の痛みや腫れ |
潜伏期間 | 約2~10日 |
感染経路 | 性行為(膣、肛門、口) |
治療方法 | 抗生物質(セフトリアキソンの注射またはアジスロマイシン)の服用 |
3.梅毒
梅毒は初期に無痛の潰瘍(しこり)が現れ、放置すると第二期梅毒として全身に広がり、さらに進行すると心臓や神経系に深刻な影響を与えることがあります。
梅毒も抗生物質で治療可能ですが、早期発見が重要です。
体の症状 (男女共通) | 第一期:初期梅毒 感染部位(主に性器、口、肛門など)に痛みのない硬い潰瘍が出現し、リンパ節が腫れる 第二期:二期梅毒 全身に赤い斑点状の発疹が現れ、特に手のひらや足の裏に多く見られる 発熱や倦怠感、リンパ節の腫れも伴う 第三期:潜伏梅毒 症状が消え、無症状の状態が続く 第四期:三期梅毒 脳、心臓、神経系、骨に障害が現れ、命に関わる場合がある |
潜伏期間 | 約3週間~3か月 |
感染経路 | 性行為(膣、肛門、口) 感染した母親から胎児への母子感染(先天性梅毒) |
治療方法 | ペニシリン系抗生物質(主にベンザチンペニシリン)の服用 |
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4.HIV感染症/AIDS(エイズ)
HIV(Human Immunodeficiency Virus:ヒト免疫不全ウイルス)は免疫系を攻撃し、適切な治療がなければエイズ(後天性免疫不全症候群)を引き起こします。
現在では抗レトロウイルス療法(ART)が普及し、HIV感染者も健康的な生活を送ることが可能となっています。
体の症状 (男女共通) | 第一期:急性HIV感染期 感染2〜4週間後に、発熱、喉の痛み、筋肉痛、リンパ節の腫れなど、インフルエンザのような症状が現れる 第二期:無症候期(潜伏期) 目立った症状はほとんどないが、HIVは体内で免疫細胞を徐々に破壊する 第三期:エイズ発症期 免疫力が著しく低下し、日和見感染※(肺炎やカンジダ症など)や悪性腫瘍が現れる ※健康な人には通常影響を与えないような弱い病原体が、免疫力が低下した人に感染して病気を引き起こす感染症 |
潜伏期間 | 数週間(急性期の症状が出るまで)から数年(エイズ発症まで |
感染経路 | 性行為(膣、肛門、口) 使い回した注射器や輸血などの血液感染 感染した母親から妊娠中、出産時、または母乳を介した母子感染 |
治療方法 | 抗レトロウイルス薬(ART)の服用でウイルスの増殖を抑制し、免疫系を保護する(ウイルスを完全に体内から排除する治療方法はまだ確立されていない) |
5.ヘルペス
ヘルペス(性器ヘルペスウイルス感染症)は再発することが多く、痛みを伴う水疱が特徴です。
感染力が強く、一度感染すると体内にウイルスが潜伏し続けます。
体の症状 (男女共通) | 性器や周辺に水疱や潰瘍が現れる 痒みや排尿時の痛み、発熱、リンパ節の腫れも現れることがある |
潜伏期間 | 約2~12日 |
感染経路 | 性行為(膣、肛門、口)、皮膚接触 感染した母親から新生児への母子感染(出産時) |
治療方法 | 抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル)の服用で症状を抑える(ヘルペスは完治せず、再発することがある) |
6.尖圭コンジローマ
尖圭(せんけい)コンジローマは、HPVの感染によって引き起こされます。
HPVの低リスク型(6型、11型など)が主な原因で、性的接触を通じて感染します。
女性の体の症状 | 主に外陰部、膣、子宮頸部、肛門周囲に小さな乳頭状またはカリフラワー状のイボが発生する イボは無痛でかゆみもないことが多いが、まれに排尿や性行為時に不快感を生じさせることがある |
男性の体の症状 | 主に陰茎や包皮、尿道口、陰嚢、肛門周囲に、小さな乳頭状またはカリフラワー状のイボが発生する 症状が進行すると、イボが増えたり大きくなることがあるが、痛みやかゆみを感じないことが多い イボが尿道内にできると、排尿時に違和感や痛みが生じることがある |
潜伏期間 | 数週間〜3ヶ月 |
感染経路 | 性行為(膣、肛門、口)、皮膚接触 |
治療方法 | 凍結療法、電気焼灼法、または局所クリーム(イミキモドクリームなど)の外用もしくは服用でイボを除去 |
これも押さえておこう、HPVとは?
HPV(ヒトパピローマウイルス)は非常に一般的なウイルスで、尖圭コンジローマの原因となります。
HPVは子宮頸がんを始め、いくつかのがんの原因になります。HPVワクチンは効果的な予防策であり、特に若い女性に推奨されます。
女性の体の症状 | 尖圭コンジローマが現れることがある(無症状なことが多い) 子宮頸部の異常細胞(異形成)を生じさせ、子宮頸がんのリスクがある |
男性の体の症状 | 尖圭コンジローマが現れることがある(無症状なことが多い) まれに、陰茎がんや肛門がんの原因となる |
潜伏期間 | 数週間から数か月 |
感染経路 | 主に性行為(膣、肛門、口) 稀だが皮膚接触や母子感染もある |
治療方法 | 特定の治療はなし(予防はワクチン接種) 異常がある場合、凍結療法や電気焼灼などで治療 |
7.トリコモナス症
トリコモナス・ヴァジナリスという寄生虫によって引き起こされます。
感染率は女性が高いのですが、男性も感染します。
男性は無症状であることが多いため、感染に気づかずにパートナーに感染を広げるリスクがあります。
女性の体の症状 | 異常な膣分泌物(黄色や緑色の泡立つ分泌物)、強い匂い 膣や外陰部の痒み、灼熱感、性交時の痛み、排尿時の痛み |
男性の体の症状 | 尿道からの分泌物、排尿時の痛み、頻尿(無症状なことが多い) |
潜伏期間 | 約5~28日 |
感染経路 | 性行為(膣、肛門、口) |
治療方法 | 抗原虫薬(メトロニダゾールやチニダゾール)の服用 |
8.カンジダ症
カンジダ症は、カンジダという真菌によって引き起こされます。
多くの女性が一度は経験すると言われています。
性的接触によって菌が広がることもありますが、通常は体内での自己感染が主な原因です。カンジダ症の再発を防ぐためには生活習慣の改善が重要です。
女性の体の症状 | 膣や外陰部の強い痒み、灼熱感、白くてチーズのような膣分泌物、性交時の痛み、排尿時の痛み |
男性の体の症状 | 亀頭や包皮の赤み、痒み、発疹、痛み(無症状なことが多い) |
潜伏期間 | 数日から数週間 |
感染経路 | 主に体内での自己感染(免疫力の低下やストレス、抗生物質の使用、ホルモンバランスの乱れなどにより菌が増殖) 性行為(膣、肛門、口) |
治療方法 | 抗真菌薬(フルコナゾールやミコナゾールなど)の服用 |
さ、さすがに俺エイズじゃないよな…。見たところヘルペスかクラミジアかな?
素人の目で見て、どの性感染症にかかっているかを判断するのはほぼ不可能でござる。
自分で判断するのではなく、まずは保健所に検査に行くか、症状がすでに出ているのであれば泌尿器科や産婦人科、皮膚科などの医療機関に相談するのが1番!
性感染症の予防法 安全なセックスを実践しよう
いろんな種類の性感染症があるな〜。でもどうやって予防したらいいんだ?って、モヤピン、ペニ丸の話聞かずにずっとゲームしてたのかよ。
このゲーム、無理ゲーなんだけど!どうやったら倒せるの?
おいおい、パーティ見直せよ。この敵には炎で固めろよ!敵には弱点があるんだぞ。
そのとお〜り!性感染症にも弱点がある!性感染症は弱点を理解すれば予防できる!最も効果的な予防方法は安全なセックスの実践でござるぞ!
コンドームは必須
安全なセックスの実践には、コンドームの使用は必須です。
コンドームはセックスの時に感染を防ぐ物理的な障壁となり、多くの性感染症から保護してくれます。
膣性交のみならず、口腔性交や肛門性交でも効果的です。
コンドームを使用することで、性感染症から自分だけでなく、相手も守ることができるため、安全で責任ある性行為の一環として重要な役割を果たします。
定期的な検査で早期発見を
性感染症の多くは初期段階では無症状であることが多く、気づかないうちに進行することがあります。
そのため、定期的な検査を受けることで、早期に感染を発見し、適切な治療を受けることができます。
特に複数のパートナーと性行為を行う場合や、感染リスクの高い行動を取った際は、検査の頻度を高めることが推奨されます。
検査結果を正直にパートナーと共有し、お互いの健康を守るための対策を講じることが重要でござる。
検査を習慣化することも大切だぞ!
そういや昔の彼女に、初めてのセックスの時は、お互いに性感染症の検査結果を持ち寄りたいって言ってた人がいたよ。面倒臭くて別れちゃったけど、今考えると自分と俺の健康を守ろうとしていたんだな…。
その人は、だいすけとセックスしなくて正解だったね。
パートナーは固定しよう
頻繁にパートナーを変えると、性感染症にかかるリスクが高まります。
新しいパートナーが増えるたびに、その人の過去の性行為歴を完全に知ることは難しく、感染の可能性が高くなってしまうからです。
そのため、パートナーが固定されている場合は、リスクが大幅に減少します。
もしパートナーが変わる場合は、お互いに性感染症の検査を受け、感染がないことを確認してから性行為を行うことを推奨します。
予防のためにワクチン接種をしよう
性感染症の予防には、ワクチン接種も重要です。
特に、HPV(ヒトパピローマウイルス)は子宮頸がんや尖圭コンジローマの原因となりますが、ワクチン接種によりこれらの疾患の予防が可能です。
若年層においては、早期のワクチン接種で高い予防効果が期待できます。
ワクチン接種は、自身の健康を守るだけでなく、周囲の人々への感染拡大を防ぐためにも重要です。
予防って大変だね〜。セックスしなきゃいいんじゃない。
俺の生きがいを奪うなよ。
モヤピン、殺生な。だが、究極の予防でござるな。
性感染症かも?と思ったらまずは医療機関に相談を!
俺は敵のことも知らなければ、自分のこともちゃんとしないまま、セックスしてたってことだね。
よくぞ理解できたな、だいすけ殿。性感染症という敵を知り、自分自身の行動を知れば、リスクを回避してセックスを楽しむことができるでござる。
モヤピンも敵の弱点を知ったらゲームで勝てるようになった〜!だいすけとも戦いたいよ〜!
よーし!相手してやるよ。モヤピンには負けない!
…だいすけ殿は病院へ早く行くでござる!
少しでも性感染症の症状があれば、専門家に相談しましょう。
おとなセイシルでは性感染症の相談施設や医師を紹介しています。
誰もが性感染症の種類や症状を理解し、予防法を実践することで、安心して性生活を楽しめることを願っています。
この記事を書いた人
福田 眞央 TENGAヘルスケア社員
保健体育科教員として勤めた後に大学院に入り、ジェンダー学・性教育を専攻。2021年からTENGAヘルスケアに携わり、10代向け性教育WEBメディア「セイシル」を担当。
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