女性の20~30%は細菌性膣症? 臭いやかゆみは疾患のサイン
おりものの異常やデリケートゾーンのかゆみなどの症状にお悩みではありませんか?
もしかしたら、それらは「細菌性膣症」の症状かもしれません。
細菌性膣症は20~30%の女性が経験するとも言われている、女性にとって身近な感染症の一つです。
今回は細菌性膣症の症状や原因、改善策について詳しく解説します。
注)「ちつ」の解剖学的に正しい表記は「腟」ですが、この記事では一般的な表記である「膣」を使用します。
この記事の監修
喜田 直江 医師
なおえビューティークリニック 院長
日本形成外科学会会員、日本性科学会会員、日本抗加齢医学会会員、ビビーブ認定医、ウルトラヴェラ認定医。TV、雑誌など多数のメディアに出演中。
あや、さっきから何度も座り直して、どうしたの?
なんか最近デリケートゾーンが痒いんだよね。
かゆいの?ムヒでも塗る?
うーん、ムヒっておまたに塗って大丈夫なのかな?実は痒みだけじゃなくて、おりものの匂いも変なんだよね。何が原因なんだろう…。
なんだろう。新種の虫刺され?
ちょっと2人とも!いくら痒いからってデリケートゾーンにムヒを塗ろうとするのは今すぐやめてよね!とにかく、あやの症状を教えてもらえるかしら?
細菌性膣症とは?
実はデリケートゾーンがヒリヒリしたり、痒かったりするの。白っぽい見た目のおりものも増えていて…。
それは様子が変ね。ちょっと調べさせてもらうわよ~えいっ。
俺様、バイキンの王様、バイキング~!
なんだこれ!なんか変なやつらがあやの膣内に!
こいつらの仕業ね。膣内の乳酸菌が減ったせいで、悪玉菌が増殖しちゃってるみたい。細菌性膣症かもしれないわ!
え~~~!?細菌性膣症って一体なんなの?
細菌性膣症は、膣内環境(膣内フローラ)の乱れによって発症する感染症の一つです。
正常な膣内には善玉菌である乳酸菌が存在していて、膣の自浄作用を保ってくれています。
何らかの原因で膣内の乳酸菌が減少すると、膣の自浄作用が正常に機能しなくなり、有害な細菌(悪玉菌)が異常に増殖してしまいます。
この、有害な細菌が増殖した状態を「細菌性膣症」と呼びます。
罹患者の半数以上は無症状という報告もありますが、それ故放置され、他の病気のリスクが高まります。*¹
ここだけの話、約20~30%の女性が細菌性膣症に罹患しているという報告もあるわ…。*²
そんなに身近な病気なんだ!
細菌性膣症の症状
細菌性膣症の症状を改めて紹介するわよ!
1.おりものの異常
粘り気のない、灰色や白色のサラサラしたおりものが大量に生じます。
おりものは生臭い匂い(魚の腐ったような匂い)がすることが多いです。
2.陰部の強い臭い
悪臭を伴うおりものが多く分泌されるため、デリケートゾーンの臭いが強くなります。
3.かゆみや灼熱感
膣やデリケートゾーンに軽いかゆみや、ヒリヒリとした灼熱感が生じることもあります。
私は全部当てはまってるなぁ…。
もちろん、これらの症状があったからといって、必ず細菌性膣症というわけではないわ。他の病気が原因のこともあるから、お医者さんの診断を仰ぐのがベストね。
WHO(世界保健機関)が定めた診断基準の中には、「牛乳をこぼしたような薄く均一な膣分泌物がある」「膣分泌物の pH が 4.5 以上」なんてものがあるわね。
放置するとどうなる?細菌性膣症は自然に治るのか
細菌性膣症かもしれないのは分かったけど、最近仕事が忙しくて中々病院に行けそうにないんだよね…。放置して、そのまま自然に治ったりしないかな。
甘いわよ!細菌性膣症には、色んなリスクがあるから、そのままにしておくのはオススメしないわ。
細菌性膣症でリスクが高まる疾患*³
-
膣内のカンジダ菌の活動が活発になり、カンジダ性膣炎が発症する
-
細菌による膣内の炎症により、性感染症のリスクが増加する
-
膣内の雑菌が膀胱に侵入し、膀胱炎の原因となる
-
膣内の雑菌が子宮に上昇し、子宮内膜炎や卵管炎の原因となる
-
娠中の場合、早産のリスクが増加する
細菌性腟症は自然に治る場合もありますが、再発も多くみられます。
おりものの異常とあなどっていると、より重度の疾患に繋がる可能性があるため、異常を感じた場合は、適切に医療機関を受診しましょう。
また、治療方法は、膣内の洗浄や膣錠の挿入などが一般的です。
うわわ、こんなにたくさんのリスクがあるのね…。
仮に細菌性膣症じゃなくても、何か気になる症状がある場合は病院を受診するのがベターね。他の病気を併発してしまうこともあるし、早めの受診をおすすめするわ!
細菌性膣症になる3つの原因とは
ところで、細菌性膣症って、何が原因で感染しちゃうのかなぁ。
いい質問ね!次は細菌性膣症の原因を紹介していくわよ。
1.膣の洗浄のしすぎ
膣内の過度な洗浄は、膣内フローラを崩してしまう行動の一つです。
刺激の強い石鹸で膣内を洗う、膣内をシャワーで洗い流すなどは、膣内の乳酸菌まで洗い流してしまうため、膣内フローラが乱れてしまいます。
2.ストレスや生活習慣の乱れなど
日常生活におけるストレスや忙しさ、睡眠不足なども細菌性膣症の原因となります。
体の免疫力が低下することで膣内フローラが乱れ、雑菌の繁殖に繋がります。
3.過度または不衛生な性行為
過度なセックスも細菌性膣症の原因となります。
膣の自浄作用が回復するまでの間に頻繫にセックスすると、細菌性膣症に繋がると考えられます。*⁴ *⁵
また、手を洗わずに陰部を触るなど、不衛生なセックスやまたはマスターベーションも雑菌が膣内に侵入する原因であり、細菌性膣症のリスクとなります。
ちなみに、「不衛生な性行為」ってどんなの?
例えば、「爪の間に汚れがたまっている」、「不衛生な場所でのセックス」「指に唾をつけて膣に指を挿入する」なんかが当てはまるわね。
そういえば、しょうたってセックスする前にもスマホをベタベタ触ってるけど、その後に手洗ってないような…。
セックス前のスマホは禁止って、しょうたに言っておくね!
細菌性膣症の予防方法
細菌性膣症にならないためには、どうしたらいいのかな?何か対策があったら教えてくれる?
もちろんよ!普段の生活習慣から予防できるものもあるから、しっかりチェックしてね。
1.細菌性膣症の原因行動を避ける
まず第一に、上で挙げたような細菌性膣症の原因行動を避け、膣内フローラのバランスを適切に保ちましょう。
細菌性膣症を防ぐための心得
-
デリケートゾーンを洗浄する際は膣内に触れず、優しく外部の汚れを取り除く程度に留める
-
心理的ストレスを避け、十分な睡眠時間を確保するなど、生活習慣を見直す
-
体調が不安定な時の過度な性行為、不衛生なセックスやマスターベーションは避ける
上記のような行動を心がけることで、細菌性膣症を予防することができます。
細菌性膣症の予防には日頃の生活習慣がとっても大事なの。細菌性膣症の原因になる行動を多くしている場合は、治療に時間がかかったり再発しやすくなるから、気を付けてね。
最近仕事が忙しくて、夜遅くまで起きてたからなぁ…。ストレスも溜めちゃってたかも。
ストレス発散だったら、モヤピンも付き合う!お酒飲みながらオールでゲームとかどう?一狩り行こうよ!
モヤピン話聞いてた?生活習慣乱れるからダメじゃん。
2.サプリなどで乳酸菌を摂取する
細菌性膣症は膣内の乳酸菌の減少により引き起こされるため、サプリメント等による乳酸菌の摂取も効果的です。
また、膣内に注入するタイプの乳酸菌ジェルもおすすめです。
乳酸菌は腸内環境を整えることで有名だけど、膣内環境を整える乳酸菌は別にあるから、膣内環境の専用の乳酸菌サプリメントを選んでね。
デリケートゾーンの異常を感じたら医療機関を受診しよう
今回は細菌性膣症について紹介しました。
細菌性膣症に限らず、デリケートゾーンのかゆみや匂いなど、異常に気づいたら早めに医師に相談しましょう。
また普段からの予防対策も実践してみてくださいね。
【参照/参考】
*1 Klebanoff MA, Schwebke JR, Zhang J, Nansel TR, Yu KF, Andrews WW. Vulvovaginal symptoms in women with bacterial vaginosis. Obstet Gynecol. 2004 Aug;104(2):267-72.
*2 Peebles K, Velloza J, Balkus JE, McClelland RS, Barnabas RV. High Global Burden and Costs of Bacterial Vaginosis: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sex Transm Dis. 2019 May;46(5):304-311
*3 性感染症診断・治療ガイドライン2016. 日本性感染症学会誌. 2016. Vol.27, No1 Supp. P77-80.
*4 Vallor, A.C., Antonio, M.A., Hawes, S.E. et al. Factors associated with acquisition of, or persistent colonization by, vaginal lactobacilli: role of hydrogen peroxide production. J. Infect. Dis. 2001; 184: 1431–1436.
*5 Verstraelen, H., Verhelst, R., Vaneechoutte, M. et al. The epidemiology of bacterial vaginosis in relation to sexual behaviour. BMC Infect. Dis. 2010. 10: 81.
この記事を書いた人
原田 樹 TENGA社員
大学では幼児教育を専攻。保育士を経た後、広告代理店に転職。タブー視されている性の話題について深く掘り下げたいと感じ、2022年にTENGAに入社。現在はTENGAヘルスケアのブランド・製品・サービスのPRを担当。
この人の記事一覧
記事をシェアする
(ソワソワ、ソワソワ)