包茎は恥ずかしい?

2025-08-25

今回のお悩み

包茎って恥ずかしいことですか?

正直、自分はあまり気にしていないんですが、昔から“恥ずかしいもの”みたいなイメージがありますよね。

そう思われがちなのって、どうしてなんでしょう?

(20代男性)

専門家からの回答

水野先生_画像

水野 哲夫 一般社団法人「“人間と性”教育研究協議会」代表幹事

元高校教諭であり、私立 大東学園の包括的性教育の授業「性と生」を長きにわたり先導。

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日本人男性が包茎を恥ずかしいと思う歴史的事情

「日本人男性の多くは包茎であることを恥ずかしいと思っている。包茎は、若者向けの性の悩み相談の上位にいつもいる。主要都市には包茎治療をうたうクリニックがかならずといっていいほどあり、それだけニーズがあることをうかがわせる」これは、社会学者澁谷知美さんの『日本の包茎 ―男の体の200年史』(筑摩選書) という本の一節です。

個々人がどう考えるかは別として、社会的に大きく捉えるならば、日本における「包茎=恥」感覚は広く存在すると考えていいのではないでしょうか。

日本で包茎が「恥ずかしいこと」と捉えられるようになってきたのには歴史的な事情があります。

包茎の外科的処置について確認しえたもっとも古い記録は、1694年ごろに、幕府医官をつとめた栗崎道有による27、8歳の男性の治療です。また、様々な名称で呼ばれていた包茎状態が「包茎」ということばで日本の医学書に初めて登場するのは1818年のことです(澁谷さんの前掲書による)。澁谷さんによれば、江戸期時代の包茎については賛否両論があったけれど、否定的な意見の方が多かったとのことです。否定論の主な理由は、性行為において女性に性的な満足感を与えにくいということのようです。

明治以降、男子が徴兵検査において全裸で性器を検査される時に、検査官に包茎をからかわれることは広く行われていたようです。

20歳になったすべての男子がそのような徴兵検査を受けた戦前期、包茎は「恥ずべき病気」であり、早漏の原因であり、性的に未熟な証拠であり、性病に感染する原因であるかのような言説が信じられ、広がっていました。

そして、包茎手術、包茎治療器の販売などは、1910年代には広く新聞・雑誌の広告で見ることができます。

美容整形の流行でさらに大きな影響が

戦後、1950年代には美容整形が流行し始めます。これが1960年代に性器整形、包茎治療ブームに至るのは時間の問題でした。1960年代の包茎手術の特徴は、病気治療という枠組みから、美容整形という枠組みへと転換したことです。

そして、1970年代以降、男性向け雑誌などに包茎手術をすすめる広告や記事などが大量に掲載されるようになります。1990年代にはネットにも広がり、より大きな影響を与えるようになりました。

包茎を科学的・医学的に認識すれば、仮性包茎は手術の必要はなく、清潔を保つことが大切ということが分かります。しかし、利益追求のためには不安をあおることの方が必要なのです。時代に合わせて包茎手術の必要性を訴えていきます。

2000年代、包茎手術をすすめるある医院のテレビCMでは、「バイバーイグッドバーイ、自信がなかった過去から自分にサヨナラ」というコメントが流れます。このコンセプトは、戦前からの包茎否定論を受け継いだものだと言えます。

専門家からの回答

tくんプロフィール画像

Tくん 大学生

大阪で包茎や童貞について研究する大学生

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「恥ずかしい」と思い込まされていた過去の自分

その気持ち、すごくよくわかります。
僕も以前は、むけている状態こそが“理想”だと思っていました。そのせいで包茎手術をして、失敗して後悔しています
中学生の頃は、クラスでは包茎が笑いのネタになっていたし、ネットや広告を見ても「包茎は治すべき」という空気が当たり前でした。
でも、手術後によく考えてみたら、「それって誰が決めた常識なんだろう?」って思ったんです。
広告やネット、先輩たちの何気ない言葉、「包茎が恥ずかしい」んじゃなくて、「恥ずかしいと思わされていた」んですよね。

プレッシャーから自由になるZ世代

でも最近は、特にZ世代の若い人たちを見ていると、そういう“見えないプレッシャー”にとらわれない人が増えてきていると感じます
たとえば銭湯やサウナでも、皮をかぶったまま(&前を隠さない)人は、上の世代よりも若い人が多いように見えます。これは「人にどう見られるか」を変に気にしなくなってきているのではないかと思うんです。
個人主義的な価値観の広がり、と言えるかもしれません。
「人と違っても気にしない」「自分らしくいることを大事にする」そんな空気が、少しずつ根づいてきたんじゃないでしょうか。
さらに、ジェンダーの視点から見ても、「男性はこうあるべき」「性器はこうでなければならない」といった“性の規範”そのものが問い直されてきています

恥じなくていい。選ぶのは自分自身

そして、性的な自己決定権「自分の体をどう扱うかは、自分が決めていい」という考え方を大切にする流れが強くなっていると思います。
だからこそ、「包茎を恥ずかしいと思わない」っていう感覚は、まったくおかしくない。むしろ今の時代に合った、健全で前向きな感覚だと思います。
誰かが作った「常識」に合わせるよりも、自分がどう感じるか。それが性における自己肯定感につながるんじゃないでしょうか。だから、「あまり気にしてない」というあなたの感覚を、僕はすごく大事にしてほしいと思います。

編集部からの回答

福田

福田 眞央 TENGAヘルスケア社員

保健体育科教員として勤めた後に大学院に入り、ジェンダー学・性教育を専攻。2021年からTENGAヘルスケアに携わり、10代向け性教育WEBメディア「セイシル」を担当。

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「包茎=恥ずかしい」は、誰が決めたのか?

健康上のリスクがある「真性包茎」などを除けば、包茎は正常であり、生理的な個人差のひとつ。
世界的に見ても、割礼(包皮の切除)文化がない国では「包茎=普通」という感覚の人も多いです。
日本には割礼文化は無いのですが、長年「包茎=治すべき」「モテない」「清潔感がない」といったネガティブな印象が、CMや雑誌、ネット掲示板などを通じて刷り込まれてきました
とくに90〜2000年代のメディアでは、「包茎=ださい/恥ずかしい/女性に嫌われる」みたいな言い方がよくされていて、それが“正しいこと”として根づいてしまった部分があると思います。

参考:包茎のほんとう

「気にしない」も立派な価値観

けれど今、若い世代を中心に「人と違っても恥ずかしくない」という価値観が少しずつ広がってきているように私も思います。
包茎かどうかよりも、自分がどう感じているか・どうケアしているか・パートナーとどう向き合っているかの方がよほど大切。
だから、「あまり気にしていない」というあなたの感覚は、すごく自然なことです。
それでも不安や疑問があるなら、医師や信頼できる情報源に相談して、自分にとっての「心地良さ」を選ぶことも大切ですね。
包茎手術の経験者による体験談もぜひ参考にしてほしいと思います。

参考:後悔した包茎手術の体験談 オナニー世界王者は世界一の遅漏でもあった

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