男の潮吹き_アイキャッチ画像

「男の潮吹き」を科学する TENGA社員の体を張った実験

2024-11-15

 「男の潮吹き」といえば、ドライオーガズムと並ぶ男子憧れの存在ですが、その正体はベールに包まれています。

 しかし2018年、とある男性の「男の潮吹き」を観測した研究が発表され、この界隈は一つの盛り上がりを見せました。

 今回は、当時その研究で実際に潮を吹いた被験者の話を交えつつ、「男の潮吹き」について解説していきます。

この記事の監修

監修者:福元和彦

福元 和彦 医師

福元メンズヘルスクリニック 院長
■泌尿器科医 ■性機能学会専門医 ■抗加齢医学会専門医 ■排尿機能学会認定医

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しょうた

(AV見ながら)男の潮吹きってスゲーなぁ…。でも男の潮吹きって本当にあるのかなぁ?できるって人に会ったことないし。

牛場


やぁ、男の潮吹きについて知りたいみたいだね。

しょうた


ん、その声!

牛場

こんにちは、TENGAヘルスケアの牛場です。男の潮吹きについて知りたいみたいだから解説してあげよう。

    「男の潮吹き」研究とは

     今回紹介する「男の潮吹き」研究は、2018年の日本性機能学会学術集会にて、川崎医科大学の泌尿器科チームより発表され、その後国際論文として公開された研究です。*¹

     この研究では、一人の男性(当時25歳)が潮を吹いている最中の、下腹部の臓器の動きや液体の流れが、超音波エコーによって観測されました。

     これは2024年現在、世界で唯一「男の潮吹き」に対して科学的考察を行った研究です。

    牛場

    この潮を吹いた男性というのが私(筆者)です。だから今回は私の潮吹き体験も交えて解説していくよ。

    しょうた


    (ゴクッ…)

    「男の潮吹き」体験

     そもそも「男の潮吹き」がどのような現象かについて、明確な定義はありません。

     なのでここでは、「男性が射精した直後、陰茎を刺激され続けることによって、尿道から勢いよく、液体が繰り返し放出される現象」と定義したいと思います。

     筆者が初めて潮を吹いたのは23歳のときでした。

     一般的に、男性が射精するとそこで性交は中断か終了します。しかしその日は、筆者が射精した後も陰茎を刺激され続けました。

     それが約10秒続いた後、全身が痙攣するような感覚と共に、潮を吹いたのでした。

     「潮吹き」で放出される液体は精液とは違いサラサラで、射精と放尿を同時にしているような感覚でした。

     しかし、「潮吹き」での液体の放出は1 m以上の高さにもなり、その勢いは明らかに射精や放尿とは異なるものでした。

    しょうた

    潮吹きってAVだけの話だと思ってたんですが、本当にあるんですね。潮吹きって気持ち良いんですか?

    牛場

    気持ち良さは人によると思うけど、自分は病みつきとなりましたね。

    その後何度も経験を重ねて、潮吹きのコツを習得しました。で、この「男の潮吹き」とは一体何なのか、という疑問を持つようになったのが研究のきっかけだね。

    「男の潮吹き」研究のきっかけ

     TENGAで働きはじめてからある日、筆者は「射精中の男性の骨盤内の様子を、超音波エコーで可視化した」という研究*²を見つけました。

     そして、「同じ手法で男の潮吹きのメカニズムも解明できるのではないか」という考えに至りました。

     研究チームへのコンタクトがとれ、「男の潮吹き」に対する筆者の疑問を打ち明けたところ、研究チームからも大いに共感を得られました。

     その後はトントン拍子で、筆者を被験者とした「男の潮吹き」研究の準備が進められたのでした。

    「男の潮吹き」研究の方法

    超音波プローブ
    *3より引用

     ここまで何度か「超音波エコー」という言葉が出ましたが、潮吹き研究では、この超音波プローブを直腸に挿入します

     その状態で射精、そして潮を吹き、その時の骨盤内の臓器の動きや液体の流れを観察するのです。

    しょうた


    直腸にプローブ…。

    牛場

    ちなみに観察は、関係者7人位(研究チーム、私、潮を吹かせてくれる協力者)が一堂に会した状態で行われてね。

    しょうた

    誰かに見られながらって…。自分はこの前、オナニーしてたらあやが部屋に入って来て見られたことはあるけど。

    牛場

    しかも場所が岡山県だったので、失敗しても簡単には次の機会は設けられない、正に本番一発勝負でした。(TENGAの所在地は東京)

    しょうた

    絶対に潮を吹かないといけない状況だったんですね。そのための準備とかって何かしたんですか?

    牛場

    そうだね。直腸にプローブを挿入して射精と潮吹きをするのが大変なので、事前にその練習をしたよ。

    当日挿入するプローブと同じサイズの棒を3Dプリンターで製作して、これを挿入した状態で潮を吹く練習をしました。潮を吹かせてくれる協力者への指導も含め3回練習して、もうかなり確実に潮を吹ける自信を持って臨みましたね。

    手術の画像

     そして迎えた実験当日、診察台の上に仰向けに寝て、「潮吹き」が行われます。

     担当医が筆者の直腸にプローブを挿入して、その超音波画像が診察台横のモニターに映し出されました。

     筆者の横には潮を吹かせてくれる協力者がいて、筆者の射精と潮吹きを補助してくれました。

    牛場

    流石に緊張しましたが、練習の甲斐もあり約20分で射精、そしてそのまま刺激を続け、「潮吹き」することに成功しました

    「男の潮吹き」の正体

     ではここから、男の潮吹きのメカニズムを、イラストと実際に観察されたエコー画像を基に解説していきます。

    まず通常の射精が起こる

    通常時の男性器の解剖図

     潮吹きの前に、まずは通常の射精が起こります。

     射精時には、精嚢と精管膨大部から、それぞれ精嚢液と精子が前立腺尿道部へ押し出されます。

     前立腺尿道部では、そこに前立腺液が加わり、これが精液となります。

     精液は前立腺の収縮に合わせて、尿道から押し出されます。これが射精です。

     この最中、膀胱と前立腺の間は閉じているので、精液は膀胱に逆流しません。

    射精 エコー画像
    *1より引用

     上記は実際の射精時のエコー画像で、先のイラストの赤線で囲った辺りを、左に90度回転させた向きで見ています。

     黄色の矢印が示すように、精嚢から前立腺尿道部へ液体が流れている事が分かります。

    膀胱から尿が前立腺へ流れる

    潮吹き エコー画像
    *1より引用

     そして次に潮吹きが起こります。

     それが上記のエコー画像で、膀胱から前立腺尿道部への液体の流れが確認されました。

     このことから、潮として放出される液体は、膀胱由来であるということがわかりました。

    前立腺が拡大収縮を繰り返し、膀胱から液体をポンプする

     更に潮吹き中は、骨盤内の筋肉の収縮に合わせ、前立腺尿道部が約1cmの拡大と収縮を繰り返している様子が観察されました。

     この拡大と収縮は、潮吹き開始後の60秒間で約20回繰り返されていました。

     この動きによって、ポンプと同じ原理で、膀胱から液体が前立腺尿道部に吸い上げられ、その後勢いよく放出されるのだと考えられます。

    牛場

    実験に立ち会った研究チームの教授曰く、約40年の泌尿器科人生の中でも、前立腺のここまで大きい拡大と縮小は初めて見た、とのことでした。

    成分検査の結果、潮の成分=尿

     またこの実験では、放出された潮が回収され、成分分析が行われました。その結果、潮の成分は尿と同一であることが分かりました。

    男の潮吹きとは、前立腺のポンプ運動による尿の放出

     まとめると、「男の潮吹き」とは、射精後の前立腺の周期的なポンプ運動によって、膀胱内の尿が吸い上げられ、そして尿道から放出される現象だということが分かりました。

     以上が、世界初の「男の潮吹き」のエコー観察の結果と、そこから考察された潮吹きのメカニズムです。

    しょうた


    男の潮吹きの正体って尿だったんですね。

    牛場

    あれだけの量を体内に貯められる場所は膀胱位なので、潮の正体が尿だというのは、理にかなってると思うよ。

    「男の潮吹き」をするための3つのコツ

    しょうた


    潮の正体が尿ってことは、僕も頑張れば潮吹きできますかね?

    牛場

    そうだね。じゃあ最後にこの研究結果と私の体験を基に、「男の潮吹き」のコツを解説しよう!

    1. 快感の強さ

     研究結果から、「潮吹き」には前立腺の周期的な収縮が必要であることが分かりました。

     通常の射精時にも、下腹部がビクビクと痙攣する感覚があると思います。

     ですので、「潮吹き」時の前立腺の収縮は、射精時のビクビクの延長上にあると考えられます。

     そして、多くの男性が体験していると思いますが、快感が強いほど射精時のビクビクも大きくなります。

     つまり、強い快感で射精するほど、前立腺も大きく収縮し、激しい「潮吹き」が可能だと考えられます。

     なので「潮吹き」を試みる際は、あまり潮を吹くことは意識せずに、まずは快感に集中して、大きなオーガズムを得ることが重要です。

    牛場

    実際、自分の体験でも、強い快感で射精したときほど、その直後の「潮吹き」も激しくなる傾向だったよ。

    逆に射精の快感が中途半端なときは、「潮吹き」はできないか、とても「潮吹き」とは呼べない、ただの放尿で終わってましたね。

    2. 骨盤底筋の強さ

    男性の骨盤底筋の解剖図

     前立腺の強い収縮を起こすためには、その収縮力を生み出す筋肉の強さが重要です。

     これはまだ推測の域を出ませんが、前立腺周囲の筋肉、つまり骨盤底筋を鍛えることで、前立腺の収縮力を増加させられる可能性があります。

     骨盤底筋は、骨盤底筋トレーニングによって強化できます。

    3. 尿を漏らす感覚

     そして、恐らく一番大切なコツが、「尿を漏らす感覚」です。

     射精後の陰茎は敏感になっており、刺激されると何だか漏らしそうな、もどかしい感覚になると思います。

     「潮吹き」では、この放尿しそうな感覚が高まったら、我慢せずに漏らしてしまうことが重要だと考えます。

     逆に筆者の場合、この「漏らす感覚」なしでは「潮吹き」ができないため、これが「潮吹き」のトリガーだと考えています。

     今回紹介した研究結果から考えても、「漏らす」動きをすることで膀胱の出口(膀胱頸部)が緩み、それに乗じて前立腺のポンプ運動が尿を膀胱から吸い出すのだと想像できます。

    しょうた


    射精直後って、なかなか放尿できないんですけど、それをやるってことですか?

    牛場

    そうだね。しょうたくんの言う通り、射精と排尿では必要な神経の仕組みが異なっているので、射精直後に排尿するのは難しいんだ。

    その仕組みに逆らって排尿すると、前立腺のポンプ作用で潮吹きが起こるという仕組みだね。

    しょうた


    へ~、上手く潮を吹くコツってあるんですか?

    牛場

    射精後の刺激による「もどかしさ」が「不快感」に変わる少し前に、骨盤底筋を脱力させて放尿する、というのがコツかな。この感覚を掴めれば、あとは自動的に「男の潮吹き」が起こるはずだよ。

    「男の潮吹き」はまだまだ未知の領域

     今回は「男の潮吹き」について解説しました。

     注意として、今回紹介した現象は、あくまで筆者にとっての「男の潮吹き」であり、研究の被験者も筆者1名だけでした。

     「男の潮吹き」が明確に定義されていない以上、何を以って「男の潮吹き」とするかは人それぞれです。

     今後セクシャルサイエンス分野の研究が進めば、「男の潮吹き」のみならず、人間の快楽についての理解も深まっていくはずです。

     おとなセイシルとTENGAヘルスケアは、今後も性に関する研究を通じて、セクシャルサイエンスの発展に貢献していきたいと思います。

    牛場


    ふー。

    しょうた


    お疲れ様です。男の潮吹きって、まだまだ謎の多い現象なんですね。

    牛場

    そうだね。自分の場合、潮吹きでは性的快感よりも達成感や解放感が強いけど、他の人では全然違うかもしれない。しょうたくんも、自分自身の潮吹きを見つけてみてね。

    【参照/参考】(リンク設定は追って対応)
    *1 Hara, Ryoei, et al. “Male squirting: Analysis of one case using color Doppler ultrasonography.” IJU Case Reports 1.1 (2018): 19-21.
    https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/iju5.12021
    *2 Nagai, Atsushi, et al. “Analysis of human ejaculation using color Doppler ultrasonography: a comparison between antegrade and retrograde ejaculation.” Urology 65.2 (2005): 365-368.
    https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0090429504010829
    *3 富士フィルム株式会社HP
    https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/ultrasound/arietta/arietta-65le/applications

    この記事を書いた人

    執筆者:牛場栄之

    牛場 栄之 TENGAヘルスケア社員(編集長)

    大学・大学院では神経科学を専攻、おとなセイシルでは性科学や性機能学、生理学の分野を主に担当。2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当。

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