LGBTQ+カミングアウト事例 両親と友人に伝えた私の体験談
カミングアウトとは、LGBTQ+当事者が自分の性自認や性的指向を周囲に打ち明けることを指します。
自分のセクシュアリティを誰かに伝えることは、とても大きな勇気が必要だと思います。
「言うべき? 言わない方がいい?」「伝えても自己満足なのでは?」「拒絶されたらどうしよう…」
この記事では、実際に家族や友人にカミングアウトした筆者自身の体験談を元に、そこから感じたことをまとめました。
カミングアウトについて迷っている方に、少しでも参考になれば幸いです。
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みらい
あやの高校時代の親友(28歳)。あやに同性パートナーの話をよくしている。
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ニジー
多様性、LGBRQに詳しい妖精。派手な見た目だが真面目。


もちろんだよ!今日はどうしたの?

この間の話を聞いて、やっぱり私も両親にカミングアウトしたいって考えてたの。でも、切り出し方を考えるとまた悩んできちゃって…。

カミングアウトは誰にとっても大事だし、悩むのも当然のことだと思うよ。今日はまた別の当事者に話を聞いてみるのはどう?何か参考になるかもしれないよ。

ありがとう!よろしくお願いします!
身近な存在だからこその難しさ カミングアウト体験

こんにちは!おとなセイシルライターの原田と申します。カミングアウトについて聞きたいことがあるんだって?

そうなんです!親に打ち明けてみようと思うんですけど、やっぱり不安になってきちゃって…。原田さんはカミングアウトの経験はあるんですか?

はい。私は同性のパートナーができたことをきっかけに、周囲に少しずつ自分のセクシュアリティを打ち明けはじめました。
私の体験が誰かの参考になるかは分からないけれど、実際に家族や友人にカミングアウトした経験をお話ししますね!
カミングアウト体験談①~姉に伝えた時~
最初にカミングアウトした身内は、両親ではなく4歳上の姉でした。
TENGAへの就職が決まった際、その報告と合わせて「私、レズビアンなんだ」と打ち明けました。
姉は驚いた様子を見せず、淡々と話を聞いてくれました。
リアクションは「へぇ~、そうだったんだ!」という一言だけ。
その落ち着いた態度が、当時の私にとって安心できる大きな支えとなりました。
その後も関係性は変わらず、むしろ「両親に伝えるときはどう話したらよいか」と一緒に考えてくれるなど、サポートをしてくれました。
初めてのカミングアウトが姉であったことは、私にとって非常に大きな安心感につながりました。

最初にお姉さんに話したのって、やっぱり話しやすかったからですか?

うん。姉はいつも冷静で、客観的に受け止めてくれる人だから。最初に誰に話すかって、すごく大事だと思う。

「話しやすい相手を選ぶこと」も、納得できるカミングアウトをするための戦略のひとつなのかもしれないね。
カミングアウト体験談②~両親に伝えた時~
私が両親にカミングアウトを決意したのは、私が29歳で、パートナーとの同棲を考え始めたときでした。
住所が変わる以上、これ以上隠し続けるのは難しいと判断し、帰省のタイミングで意を決して伝えました。
両親は比較的かための性格です。
私自身、両親からの過保護さを負担に感じていたこともあり、当時は月に一度の電話と年に数回の帰省という距離感を保ちながら過ごしていました。
カミングアウトをした直後、返ってきたのは戸惑いの言葉でした。
特に母からは「どう受け止めればいいのか分からない」「いつから?どうして?」と矢継ぎ早に質問され、さらには「あなたはこれまで普通だったじゃない」という一言もありました。
正直、その言葉は深く胸に刺さりました。

うわぁ…その言葉、すごくきついですね…。私だったら立ち直れないかも。

確かに辛かったよ。でも、関係が壊れたわけではなかったの。そこが大きかったと思う。

すぐに理解してもらう必要はなくても、「関係を続けられたこと」自体が大きいんだね。
その後もできる限り普段どおりの関係を心がけたところ、時間の経過と共にぎこちなさは少しずつ薄れていきました。
現在では、母の口から「彼女さんはどうしているの?」と自然に話題が出ることもあります。
両親が完全に理解しているかどうかは分かりません。
ただ、頭ごなしの否定や感情的な応酬にならなかったことが、関係を続けられた大きな理由だと感じています。
「受け入れるかどうか」も親の自由だと、私は思っています。
理解を強要するのではなく、自分の言葉で率直に伝えられたこと自体に意味があったのではないかと感じています。

それを聞くと、私も、全部をわかってもらおうとしなくていいのかも、とも思いますね…。

そうだと思う。“理解してほしい”って押しつけてしまうと、お互いに苦しくなるから。私にとっては、「自分の言葉で率直に伝えられたこと」自体に意味があったんです。
カミングアウト体験談③~友人に伝えた時~
A子は、共通の趣味を通じて仲良くなった5年来の友人。
当時私が28歳で、半年ぶりに会ったとき、近況報告の流れで「実は彼女がいるんだ」と自然に伝えました。
返ってきたのは、即座の「おめでとう!」。
驚いた様子もなく、ただ喜んでくれました。
以前から私が「ガールズラブの作品が好き」と話していたこともあり、「もしかしてそうかなと思ってた」と笑っていました。
もちろん、すべての人がこんなふうに受け止めてくれるわけではありません。
でも、その瞬間は心の底からホッとしました。
A子という友人の存在と関係性に、改めて感謝した出来事でした。

そんな反応だったら、すごく救われますね!

本当に安心したよ。もちろん誰もがそう受け止めてくれるわけじゃないから、伝える時は毎回緊張します。ただA子はとてもポジティブな反応で、本当にホッとしました。

日頃から築いてきた信頼関係があるからこその「おめでとう!」なんだね!
カミングアウトで気づいたこと
カミングアウトを通じて、私は自分の感情が大きく揺れ動くのを感じました。
カミングアウトには、「隠す後ろめたさから解放される安心感」と同時に、「相手に拒絶されるかもしれない恐怖」も常につきまといます。
私はすべての人にオープンにするつもりはありません。
しかし、大切な人には伝えたいと思います。
それは、自分のアイデンティティの大きな部分を知ってほしいと思うからです。
時には「これは自己満足なのでは?」と自問することもあります。
それでも、大切な人には自分の言葉できちんと伝えたいと思います。
隠し続けることの方が、私にとっては苦しさが大きいと感じるからです。

「伝えることは自己満足かもしれない」って考え方、すごく共感します…。私もよくそう思ってしまって。

その感覚は自然なことだと思うよ。でも最終的には、やっぱり「自分が納得できるかどうか」が一番大切なんだと思う。
カミングアウトのポイント
カミングアウトの体験を振り返ると、状況や相手によって反応も気持ちの揺れも大きく異なっていました。
それでも共通して言えるのは、「自分がどうありたいか」 を軸にすることの大切さです。
以下に、体験から見えたポイントを整理しました。
カミングアウトのポイント
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カミングアウトを成功体験で終えられるかどうかは、その後の当人のカミングアウトへの考え方にも大きく影響する。そのため、最初にカミングアウトする相手は「安心して話せる人」を選ぶのが良い。
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相手にすぐ理解してもらう必要はない、という心構えも必要。大切なのは「関係を続けられること」。
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カミングアウトをするかどうかで迷ったら、「信頼関係があるかどうか」で考えてみるのがよい。
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カミングアウトは「理解を勝ち取る戦い」ではなく、「自分らしく生きるための選択」。納得できるかどうかを大事に。
これからカミングアウトを考えている人へ
カミングアウトに「正解」や「不正解」はありません。
タイミングも方法も、誰に伝えるかも、人それぞれ異なります。
大切なのは、自分が納得できる選択をすること。
迷っても、揺れ動いても構いません。
とにかく焦らずに選び取ってほしいと思います。

少し勇気が湧いてきました!私も、自分が納得できる形を探してみます!

そうそう!みらいも、自分に合ったやり方とタイミングを選んでほしいな。

どうかあなたが、自分らしくいられる一歩を踏み出せますように。それが私の願いです!
この記事を書いた人

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ニジー、この間はカミングアウトについて相談にのってくれてありがとう!またちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?