不倫・浮気って何が悪いの?
今回のお悩み
不倫・浮気って具体的にどういけないのでしょうか?
なんで人は浮気するのでしょうか。
(20代男性)
専門家からの回答

専門家からの回答

古村 健太郎 弘前大学人文社会科学部准教授
恋愛関係や夫婦関係の消極的な維持、失恋、恋人間の暴力など親密関係について研究している。また、自治体や学校と協働し、自分たちの遊び場を自分たちで作る活動にも挑戦中。
関連記事を見る社会の共通認識に違反している
不倫や浮気がいけない理由の一つは、「私たちが共有している社会の共通認識に違反しているから」です。
私たちが生活する社会には、「恋愛関係は一対一であるべき」「恋人/夫婦らしい行為をパートナー以外とはすべきではない」などの共通認識が存在します。
そして、恋愛関係や夫婦関係の在り方は、この共通認識に沿ってつくられていきます。
恋愛関係のスタートである告白とその承諾は「あなた以外とは恋人らしいことはしない」という契約を交わしていると言えますし、夫婦関係になれば法的な拘束力も加わります。
この共通認識が存在する理由は複雑です。
社会秩序の維持という社会的要因、両親による子育ての促進や性感染症の拡大抑止という進化的要因、教義による標準化という宗教的要因などが複雑に絡み合っています。
ただし、最近では互いの合意のもとに複数のパートナーを持つポリアモリーも出現しており、共通認識は緩やかに変化しているのかもしれません。
不倫や浮気の背景にはパターン化した要因があるかも
共通認識があっても、不倫や浮気をしてしまう人は一定数います。その要因として、いくつかの理由が考えられます。
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共通認識に従おうとする気持ちが弱い
「不倫や浮気は絶対だめ」と考える人もいれば、「バレなければいい」と考える人もいます。後者の方が不倫や浮気をすることに寛容になるでしょう。
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不倫や浮気をするチャンスがあるかどうか
仮に不倫や浮気をしたいと思っていたとしても、そのチャンスがなければ不倫や浮気はできないでしょう。一方、他の人にバレない状況で実行可能であれば、自分を抑制できずに不倫や浮気をしてしまうかもしれません。
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パートナーを失うことによる損失が少ない
その場合、自分をパートナーとの関係に縛り付けておく必要性が低く、別な相手にアプローチした方が合理的です。その結果、不倫や浮気へと走るかもしれません。
なお、これらの要因があるからといって、必ず不倫や浮気をするというものではありません。
抑制方法を見つけるだけでなく、浮気・不倫の基準も話し合っておく
また、(法律とは別の意味で)不倫や浮気の基準には個人差が存在します。ある行動を不倫や浮気と判断する人もいれば、判断しない人もいます。
その基準のズレが、結果として、どちらかが不倫や浮気をしたという悲しいすれ違いの状況を生み出すこともあります。
不倫や浮気で後悔しないためにも、自分を抑制したり、パートナーと基準を確認したりしたいですね。
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現在は浮気・不倫で刑罰を受けることはない
法律家の立場からご質問にお答えします。
刑事上の責任と民事上の責任
法律上の責任には、主に刑事上の責任と民事上の責任の2つがあります。
刑事上の責任
罰金や拘禁刑などの刑罰を受けます。
民事上の責任
金銭の支払義務などが生じます。
現在、「浮気・不倫をしたら罰する」という法律はありません(昔は、姦通罪というものがありました)。
したがって、浮気・不倫をしても、刑罰を受けることはありません。
民事上は問題があり、不倫で慰謝料をとられる可能性がある
もっとも、民事上の問題が生じることがあります。
不倫は離婚の原因になりますし、慰謝料を支払わなければならなくなるかもしれません。
離婚の原因
日本では、ほとんどの場合、話し合いで離婚が成立します。しかし、なかには話し合いがまとまらず、裁判によって離婚を決める場合があります。不倫は、その際の離婚原因として認められます。
民法770条1項1号は、離婚の理由として「配偶者に不貞な行為があったとき」と定めています。不貞な行為とは、結婚している人が配偶者以外の人と性的関係を持つことです。一度きりの関係でも、不貞な行為にあたると考えられています。
この背景には、日本の法律が「一夫一妻制を採用してる」ということがあります。この制度のもとでは、夫は妻だけと、妻は夫だけと性的な関係を持つべきだとされています。
結婚しているのに他の人と関係を持つことは、制度の本質に反する行為だと考えられているのです。
慰謝料
そして、不倫をした側は慰謝料を支払う義務を負うことがあります。慰謝料という言葉はよく知られていると思います。つまり、精神的損害の賠償として支払われるお金のことです。
法律的には、慰謝料は不法行為に基づく損害賠償(民法709条、710条)にあたります。
婚約の場合「浮気」で慰謝料の発生はあり得る
婚姻状態ではないカップルの場合、一方が浮気しても法律上の責任は基本的に生じません。
ただし、婚約していた場合は、民事上の責任が生じるときがあります。
例えば、婚約が成立しているのに、一方が他の人と性的関係を持ち、結果的に婚約がだめになった場合、慰謝料が発生することがあります。
法律を守っていれば、倫理的・道徳的に正しいというわけではない
ここまで法律家の立場から浮気・不倫について解説してきました。
婚姻していないカップルの一方が浮気をした場合などは、法律的な問題にはなかなかなりません。
ただし、それは、道徳的・倫理的に問題ないという意味ではありません。
現代社会では、法律と道徳・倫理は必ずしも一致しないからです。
浮気・不倫が道徳的・倫理的にどういけないのかは、法律論とは別に考えてみる必要があります。