緊縛師インタビュー

現役緊縛師が語る(後編) SMとセックスの哲学

2026-04-28

 皆さんも「緊縛」なるワードを、一度や二度は耳にしたことがあるはず…。

 「緊縛」とは「荒縄や綿ロープなどを用いて人体を縛る行為」のこと──海外でも「KINBAKU」の表記で、マニア間では共通認識されているといいます。

 現在では、フェティシズムの対象……もしくは「SMプレイ」の技法の一つとして捉えられており、一般的には「縛るヒト=S」「縛られるヒト=M」という構図が、まず頭に浮かぶのではないでしょうか。

 だかしかし! 「縛り手」と「受け手」の関係性はそう単純な話でもないようで…!?

 後編では、そこらへんの真相を皮切りに……より突っ込んだ話を、緊縛師のHIBIKIさんからお伺いしました。

この記事の協力者

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HIBIKI 緊縛師

年齢・出身非公開。緊縛歴は22年で縛った女性は数百人にも及ぶ、業界内では一目置かれるベテラン緊縛師。新宿二丁目で「Kスタジオ(緊縛スタジオ)」を経営。月2回ハプニングバーなどで、さらには毎週SMの女王様を対象に緊縛講習会を行なっている。自身の〝作品〟に私小説を添えたインターネットコンテンツ『HIBIKIの緊縛写真』も好評配信中。

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この記事を書いた人

ゴメス

山田 ゴメス ライター&イラストレーター

年齢非公開のアラカン。大阪府生まれ。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味とするライター兼コラムニスト&イラストレーター。若者男性向け総合情報誌『Hot-Dog PRESS』(講談社)の「SEX・恋愛マニュアル記事」を休刊(2004年)までの約10年間担当し、その他にも多くのエロ・グラビア雑誌や書籍の創刊、制作に携わる。

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    「緊縛」と「SM」はイコールなのか?

    山田ゴメス(以下、ゴメス) 「SMの一環(=延長)として緊縛がある」というのが世間一般的なイメージだと思うのですが……それは、はたして正しいのでしょうか?

    HIBIKI むずかしい質問ですね。「近代緊縛」の世界では、必ずしも「縛り手=S」「受け手=M」という公式が成立するわけではないため、迂闊に「緊縛」と「SM」をイコールでは括れないような気がします。

    ゴメス え? どういうことなのでしょう? もう少し詳細をお聞かせください。

    HIBIKI 「前編」でも申しましたが──たとえば、(「近代緊縛界」の巨匠である)明智伝鬼さんなんかは、元々はM男で、ワガママ(?)なパートナーから「私を緊縛して!」と命令されて、「緊縛」の技術を学んだわけです。

    そのあたりから「拘束」としての「緊縛」、「美観」としての「緊縛」……と、「緊縛」が「SM」から独立し始めてきました。実際、いまどきの緊縛師は、他のSMプレイを一切しないってケースも多いですし……。やっても「蝋燭」「バラ鞭」くらいでしょうか。

    緊縛師 インタビュー HIBIKI

    ゴメス 昨今の「SM」というプレイのカジュアル化も、そういった「関係の曖昧性」の一端を担っているのでは?

    HIBIKI おっしゃるとおりです。まだ「SM」が確固たる地位を獲得していた頃は、「女王様」がいて「M男」がいて…と、そういう揺るぎない「主従関係」が存在していました。

    しかし、風俗産業で「M性感」が流行り出してからは、「M男がやってほしいことを女王様風のキャストがやってあげる」という構図になってきて──イニシアチブは完全に「M側=客側」へと移ってしまい……。そうなれば、SMも「結局はどっちがSで、どっちがMなんだ?」と、関係性があやふやになってきますから。

    ゴメス なるほど……。本気で相手を虐めたいのなら、わざわざ難易度の高い緊縛技を時間をかけて習得するより、枷や手錠で拘束したほうがずっと合理的で楽チンですもんね。

    HIBIKI ですね(笑)。

    「緊縛中」の「セックス」はアリなのか?

    ゴメス HIBIKIさん自身は、そもそもが「S(=サディスト)」なんですか?

    HIBIKI ぼくは……いや、ぼく〝も〟たぶん「S」ではありません。「緊縛をしているときはSであるべき」だとは思っていますけど……。少なくとも「相手の身体的限界を鑑みず、とことんまでイッちゃう」みたいな「真性のサディスト」ではないです。

    ゴメス じゃあ、「緊縛」の最中、〝男〟としてムラムラしちゃったりも?

    HIBIKI 普通にしますね。自分が撮った緊縛写真をあとからパソコンでチェックしたりするときも、ちゃんと(?)勃起していますし…(笑)。

    緊縛師 インタビュー HIBIKI

    ゴメス ちょっぴり質問しづらいことではあるのですが……「緊縛」のプロセスに「セックス」を取り入れるのはアリ???

    HIBIKI ぼくがインターネット上で運営している『HIBIKIの緊縛SM写真』のビジュアルに添えている小説では、「ご褒美としてのセックス」を描くパターンが多いのですが、そこは「緊縛界」でも論争の焦点になっています。

    (緊縛中の)「セックス」を邪道だと批判する意見は、たしかにある。とくに、女性の緊縛師に多い。

    「緊縛」とは、ある意味「相手を動けない状態にすること=なにをしてもOK」な状態なわけですから、トラブルも起きやすい。

    たとえば、一人の男性緊縛師が一人の可愛い女性から「私を縛ってください」とお願いされたとしますよね? で、縛っていくうちに……〝男〟だったら本能的にヤリたくなっちゃうじゃないですか。

    ゴメス そりゃそうだ(笑)。

    緊縛師 インタビュー HIBIKI

    HIBIKI だから、ぼく個人としては「緊縛中のセックス」はアリ! ぼくの「緊縛」は〝受け手〟との信頼関係在りきの(原則としては)二人っきりの世界なので、欲望の赴くまま、素直にやりたいことをやればいい──縛ったあと、またはその途中のセックスはむしろするべきだという考えです。

    緊縛されて昂っている女性と、それによって興奮をしている男性がもっと気持ちいいことをするのはごく自然な流れですから。

    ハッキリ言ってしまえば、ぼくのなかで「緊縛は前戯」なんです。だけど、現在の「緊縛界」では「緊縛はホンバン」なんです。しかし、それが「ダメ!」だと否定する気も、ぼくには毛頭ありません。

    ゴメス 「セックスNG派」の男性緊縛師は、作業中──欲情しないんですかね? 

    HIBIKI う〜〜〜ん……「己の美意識の追求」で満足できているのかもしれませんが……たぶん欲情はしているんじゃないかな(笑)? 単に、緊縛BARだとかの「緊縛できる場所」の多くが「セックスできない場所」だから我慢しているだけ…だと思いますね。当然のこと、ショー中のセックスは禁止ですし……。

    「緊縛師」として理想的な女性のタイプ…などについて

    ゴメス 「緊縛師」としての女性の好みは?

    HIBIKI 「緊縛師」としての好みは、まったくありません。一男性としての個人的な好みと、ほぼイコールです。肉感的な女性よりはスレンダーな女性のほうが好き……できれば背が高い子のほうがいい。

    今回、ここで公開している緊縛写真のモデルを務めてくれたアイちゃんは、そこまで身長は高くないんだけど、ボディバランスが良いから背も高く見えますし……。あとは、Mっ気があって、ぼくのことを好いてくれる子(笑)。

    ゴメス フツーの男子会で告白するのと同じような感じじゃないですか! 安心(?)しました(笑)。

    緊縛師 インタビュー HIBIKI

    HIBIKI ただ、好みを抜きにした、「縛りやすい」という観点のみから言えば「筋肉質で小柄な子」がベストでしょう。ある程度筋肉はあったほうが安全だし、「体重が軽い」というのは〝縛り手〟からすると、大きなアドバンテージです。あと、「関節が柔らかい」ということも案外大事。

    「巨乳」のほうが縄映えするという側面はあるかもしれませんが、ぼくはそこにはあまりこだわりません。最終的には「〝縛り手〟がなにをやりたいか」なのです。

    ゴメス コスプレに対するこだわりは?

    HIBIKI それもほとんどないですね。〝縛り手〟が初心者の場合、着物や長襦袢*¹は〝作業〟の邪魔になるってことぐらいで……。

    *1 長襦袢(ながじゅばん):着物の下に着る和装用の下着のこと。着物を汗や皮脂などの汚れから守り、着崩れを防ぐ役割がある。


    緊縛 長襦袢
    長襦袢緊縛。長い袖や裾が邪魔になるため、難易度は高い。

    HIBIKI あえて好きなコスチュームを挙げるなら「ブルマ」ですが、それも「スポーツ女子好き」という、単なる個人的嗜好によるものでしかありません(笑)。

    ゴメス 「緊縛の終了」のタイミングは、なにが目安になるのでしょう? 

    HIBIKI 「フィニッシュ」と言うか「ゴール」は──「〝縛り手〟が理想としている緊縛を完成できたとき」「〝受け手〟がエクスタシーに達したとき」……ほか、さまざまな解釈があるんでしょうけど、シンプルに「終了のタイミング」は「時間」によって決まるのではないでしょうか。

    「緊縛」という行為には大きな危険が伴いますので、「ここまででやめておこう」「これ以上続けるのは〝受け手〟の命にかかわる」といった見極めが大切になってきます。

    なので、ぼくのおおよその見立てだと、「吊り無し」だと1時間くらい、「吊り有り」だと(実際に吊っている時間は)せいぜい15分程度が限界。一度吊ったら、その後の緊縛の流れは45分くらいまで短縮します。そして、1クールごとに15分くらいの休憩を必ず取るようにしています。

    緊縛 吊り
    吊り緊縛。手順や締め具合を誤ると〝受け手〟の生命にも関わりかねない危険な大技。

    「緊縛」は危険な遊戯ゆえ独学は絶対禁物!

    ゴメス 「緊縛業界」のリアルな現状についても、お聞かせください。

    HIBIKI 「SM業界」は女王様やM男さんの高齢化によって確実に斜陽化していますが……「緊縛界」は今がピークだと、ぼくは見ています。

    ゴメス ほう! 「ピーク」……なんですか!?

    HIBIKI 15年ほど前にHajime Kinokoさんという緊縛師がアーティスト的なスタンスで世に出てから……その彼をトップとした、ポピュラーかつカジュアルに「緊縛師」を名乗る層が急増したのです。なんせ、KinokoさんはあいみょんさんのPV撮影でも、緊縛を披露していますから。

    緊縛師 インタビュー HIBIKI

    HIBIKI こうしたトレンドの影響もあって、「緊縛を齧(かじ)っている人材」は今、異様に多いんです。けれど、そのブームもすでに終焉へと向かいつつあると思います。理由は簡単で、「緊縛」は「SM」以上に商売にならないから。しかも、「技の習得」には膨大な時間もかかりますし……。

    ゴメス 「緊縛師」になるための修行期間はどれくらい必要なのでしょう?

    HIBIKI 最低でも「週一で半年」はマストです。たとえば難関資格と呼ばれている司法試験などでは「絶対勉強時間」というものがあるんですけど、ソレと同じ。それでやっと「胸縄」*²ができるようになるくらい。「吊り」まで学ぶのなら、1〜2年は必要です。

    *2 胸縄:胸や乳房部分に縄をかける緊縛技法のこと。両腕を後ろ手にして併束することが多い。


    緊縛 胸縄
    胸縄後手縛り

    ゴメス 「誰に教わるか」も重要ですよね?

    HIBIKI もちろんです。しかし、しっかりとした〝師匠〟と出会える機会は、なかなかに稀なのかもしれません。中途半端な技しか教えられない緊縛師はたくさんいるのですが……。

    ゴメス 「HIBIKIさんの〝弟子〟になりたい!」という緊縛師志願者も多いでしょ?

    HIBIKI 現時点で、女性も含む何人かの〝弟子〟のような人材はいます。一応、「緊縛講座」も開催はしているのですが──正直、そこまで積極的に〝伝授〟したいという願望はありません。ぼくの「緊縛」に対するポリシーを100%理解してくれる、(できれば)若い世代になら教えてもかまわない……程度の気持ちです。

    緊縛師 インタビュー HIBIKI

    HIBIKI  なぜなら、Hajime Kinokoさんが有名になってきたあたり──「緊縛」にメジャーの光が当たってしまい、そこにビジネスが過度に絡んできたころから……(とくに男性の志願者は)「モテたい」「ヤリたい」という下心が、「緊縛」に取り組むメインの衝動になってきたので……。

    じつのところ、そういった〝不純な動機〟こそが「緊縛業界」に妙なズレが生じてきた大きな要因だと、ぼくはにらんでいます。

    ゴメス それは由々しき問題ですね……。では、そんな憂うべき業界事情のさなか、ぜひ「緊縛初心者」に向けたメッセージをお願いします。

    HIBIKI  過去に、ホリエモンさん「寿司屋の修行は無駄」みたいなことを発信し、〝炎上〟へと至りましたが……こと「緊縛」に関しては、必ず「きちんとできる人」に付いて、充分すぎるほどの修行を積んでから行うべき! 何度も繰り返しますが、「緊縛」は事故と常に隣り合わせな〝遊戯〟だからです。

    緊縛師 インタビュー HIBIKI

    HIBIKI くれぐれも独学、見よう見真似は禁物です。神経が細いパーツを無理やりにきつく縛ると、後遺症が残る可能性もありますし……「古典緊縛」ならそれもアリなんでしょうけど、現代社会においてはれっきとした犯罪ですから。

    まずは〝師匠〟の「緊縛」に対する哲学を正しく理解して、その人が縛っているプロセスをリアルに見学してから、それらに賛同できた上で学ぶこと。野球のコーチとかと一緒で、いろんな人から中途半端につまみ食いっぽく教わっても、身にはなりません。

    ゴメス 最後に…一言で「緊縛」の魅力とは?

    HIBIKI 〝縛り手〟と〝受け手〟の究極的な信頼関係──これに尽きると思います。〝受け手〟は「緊縛」を知り尽くした〝縛り手〟に全面的に身を任せ……そんななかで、〝縛り手〟は〝受け手〟をどうエクスタシズムへと導いていくのかを試行錯誤する──あくまで、ぼく個人の哲学ではあるのですが……。

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