女性ホルモンとは 分泌量が原因の5つの病気や症状
女性ホルモンとは、卵巣から分泌されるエストロゲン、プロゲステロン2種類のホルモンのことです。
女性の生涯において、体づくりやメンタルヘルス、体調など、さまざまな影響を与えています。
この記事では、女性ホルモンの働き、年齢による変化、分泌量が原因の病気や症状、更に分泌量のコントロール方法までを解説します。
この記事の監修
喜田 直江 医師
なおえビューティークリニック 院長
日本形成外科学会会員、日本性科学会会員、日本抗加齢医学会会員、ビビーブ認定医、ウルトラヴェラ認定医。TV、雑誌など多数のメディアに出演中。
全然元気じゃないかも…。いつもよりなんだかイライラして…。なんならモヤピンにもイライラしてきちゃいそうだよ…。ごめんね…、こんな気持ちになりたくないのに…。
え!?モヤピンのこの可愛さがあやをイライラさせてしまっているってこと!?どうしよう…。モヤピンってやっぱり可愛いすぎるよね、なんて罪な妖精…。
なんだかさらにイライラしてきたような…。普段なら気にならないことも、変に気になっちゃったりしてすごく辛いの。
生理前だからかな?でも、生理前って今まではお腹の痛みが強くなる感じだったんだよね。急に精神的な症状も出ることあるのかな…。
そこのあなた、そのお悩みには「女性ホルモン」が影響しているんじゃないかしら!
!? いきなり誰???
私はオキシトシン子。女性ホルモンは女性の体で重要な働きをするホルモンなんだけど、分泌量のバランスが崩れると、心身の不調につながるのよ。
そして年齢によっても分泌量は変わるし、あなたくらいの年代では日々の変動も大きくて、生理前の症状が重たくなることもありますよ。
まずは女性ホルモンがどういったものかを学んでいくと、そのイライラを和らげることができるかもしれません。
女性ホルモンとは?分泌の流れ・働き
女性ホルモンとは、卵巣から分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類のことで、バランスを取って分泌されています。
「妊娠・出産の機能、そのための体づくり」が主な役割で、女性ホルモンの分泌は排卵や生理(月経)にも大きく関わっています。
女性ホルモンは、大脳と小脳の間に位置する間脳(視床下部)からの指令をもとに、卵巣から分泌されます。
さらに、女性ホルモンが卵巣から分泌された後には、その情報が脳へと伝達されます。
このように女性ホルモンは脳で分泌量がコントロール・調節されています。こうした機能をフィードバック機能といいます。
女性ホルモンって存在はなんとなく知っていたけど、どうやって分泌されているかは知らなかったな。
女性ホルモンの分泌の流れには、エストロゲンとプロゲステロンの他に、脳から分泌される、性腺刺激ホルモン放出ホルモンの「ゴナドトロピン放出ホルモン」と性腺刺激ホルモン「ゴナドトロピン」が大きく関わっています。
そもそも、この二つのホルモンが出ないと卵巣に「女性ホルモンを分泌して」という指令が伝わらないんです。
ひとことアドバイス
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女性ホルモンの分泌後は、卵巣から「女性ホルモンをこれくらい分泌しました」という情報が脳に伝達され、その情報をもとに脳内での女性ホルモンの分泌指令が調整される(これがフィードバック機能)という流れになります。
つまり、脳と卵巣は常に連携しています。
モヤピンとお名前が似てる!もしかしてモヤピンって進化するとゴナドトロピンになっちゃう?
(なるわけないでしょ)
女性ホルモンは、脳からの指令で分泌されることがわかりました。
では、ここからは「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類のホルモンが女性の体にどのような影響を与えているか、見ていきましょう。
エストロゲン(卵胞ホルモン)の働き
エストロゲンは思春期以降に活発に分泌されるようになります。
卵巣の中にある卵胞(卵子が入っている袋)から分泌されるため「卵胞ホルモン」とも呼ばれています。
生理周期では、卵胞期から多く分泌されます。
生理周期について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
エストロゲンには、下記の働きがあります。
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子宮内膜を厚くして妊娠の準備を行う
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女性特有の丸みのある体づくり
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コラーゲンの生成を促して肌を美しくし、髪にハリ・コシを与える
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脂肪燃焼を促進
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生殖器官(膣・卵管・子宮・乳腺)、骨・血管・神経・脳の状態維持
エストロゲンは骨にも重要な影響を与えています。
骨では、骨芽細胞と破骨細胞が日々、骨の生成と破壊を行うことで、健康な状態を維持していますが、エストロゲンには骨の破壊を行う破骨細胞の働きを抑える働きがあり、これが骨の健康に繋がっています。
エストロゲンは、女性の美や健康を守るホルモンとして、全身に影響を及ぼしているのです。
プロゲステロン(黄体ホルモン)の働き
プロゲステロンは主に、生理周期でいう排卵期から多く分泌されます。
卵巣の中にある卵胞は、排卵後には「黄体」と呼ばれる組織に変化します。
プロゲステロンは黄体から分泌されるため「黄体ホルモン」とも呼ばれています。
下記の働きがあります。
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子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に整える
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妊娠を維持する
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子宮内膜の増殖を抑える
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基礎体温を上げる
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乳腺を発達させる
ふむふむ…。女性ホルモンは女性の体に色々な働き方をしているってことはわかったよ!でも、良い働きばっかりじゃない?あやはなんでイライラしちゃうの?
実はね、女性ホルモンを分泌する指示が卵巣に上手く伝わらなかった場合、分泌量が変わったり、止まってしまったりすることがあります。
そうなると、ホルモンバランスが乱れて、あやのように、心身に不調が現れることがあるんです。
そうなんだ!何事にもバランスって大事だね。モヤピンも可愛さとかっこよさのバランスをいつも気にかけてるんだ〜。
女性ホルモンのバランスが乱れる原因
ここからは、女性ホルモンのバランスが乱れる原因を解説します。
年齢に伴うエストロゲンの分泌量の変化
エストロゲンの分泌量は、年齢に伴い大きく変化していきます。
初潮を迎えたタイミングで女性ホルモンの分泌量が急増し、20代から迎える性成熟期では、分泌量が安定し、性機能も成熟するため妊娠や出産に向けて体の準備が整っていきます。
30代から40代にかけては徐々にエストロゲンの分泌量が減少します。そのためホルモンバランスが乱れやすく、排卵が抑制される場合もあります。
月経不順や卵巣・子宮の病気にかかるケースもあるため注意しましょう。
40代後半から50代になると、更年期を迎えてエストロゲンの分泌量は急激に減少し、閉経するため、ホルモンバランスが崩れやすくなります。
肩こりや疲労感、のぼせなどの更年期症状が現れる場合もあります。
閉経の平均年齢は50.5歳といわれており、更年期とは閉経の前後5年間の計10年間と定義されています。*¹
私だと今は「性成熟期」に該当するね。エストロゲンの分泌量はここから徐々に下がっていくんだね。
ストレス・疲労・栄養不足によるもの
女性ホルモンの分泌量は、ストレスや疲労、栄養不足などが原因で乱れることもあります。
これらは、脳からの「女性ホルモンを分泌させる指令」を妨げる原因となって、分泌量のバランスが取れなくなってしまうのです。
今の私は年齢的にもエストロゲンの分泌量が変化しているし、最近は生活習慣も乱れていたから、特にホルモンバランスを崩しやすかったのかもしれない…。
女性ホルモンの分泌量が原因となる病気・症状
女性ホルモンの分泌量が多過ぎる/少な過ぎる状況は、病気や不調につながります。
年齢の変化だけでなく、結婚、妊娠・出産、育児、介護などのライフステージの変化によってホルモンの分泌量も変わっていきます。
女性ホルモンは、体だけでなく、心のバランスにも影響をもたらすので、注意が必要ですよ。
1.生理不順・無月経
生理(月経)には、女性ホルモンが大きく関わっています。
そのため、女性ホルモンの分泌の乱れは、生理周期が乱れる「生理不順」や生理が3カ月以上こない「無月経」の原因になります。
2.更年期障害
更年期を迎えるとエストロゲンの分泌量が急激に低下するため、心身ともにさまざまな不調がでてきます。
代表的な症状には以下のようなものがあります。
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ほてり、のぼせ
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ホットフラッシュ
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発汗
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肩こり
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頭痛
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動悸
上記の症状が、日常生活に支障をきたすほど重たい場合は「更年期障害」とされています。
3.子宮関連の病気
女性ホルモンの分泌量が正常よりも多いと、子宮内膜症など以下に挙げる疾病のリスクが上がります。
病名 | 症状 |
子宮内膜症 | 子宮内膜に似た組織が、子宮以外の場所にできる 生理の時に子宮内膜と同じように増殖して剥がれるため、出血が起こるが、血液を排出できないので溜まった血液によって炎症が起こる |
子宮筋腫 | 子宮の壁にこぶのような良性の腫瘍ができ、女性ホルモンの作用で大きくなったり、複数できる 子宮の内側が変形するため強い生理痛や経血の量が増える |
子宮腺筋症 | 子宮の筋肉に子宮内膜に似た組織ができて子宮が大きくなる 生理の時に子宮の筋肉で出血が起こるので強い生理痛や経血の量が増える |
これらは、年齢や妊娠・出産の希望をもとに、薬や手術による治療が検討されます。
また、閉経とともに女性ホルモンの分泌量が減少して改善していくケースもあります。
4.メンタル不調
女性ホルモンのバランスの乱れは、体だけでなく心にも影響し、うつ病・抑うつ、不安などメンタルの不調につながる場合もあります。
5.PMSの悪化
生理(月経)の3~10日ほど前から起こるPMS(月経前症候群)の症状は、人によってさまざまです。
体の不調に加えて、イライラする、泣きたくなる、情緒不安定などがあります。
生理周期では、卵胞期にエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が増えた後、黄体期後半には減少していきます。
PMSの原因は明らかにはなっていませんが、分泌量の変動が大きく関わっていると考えられています。
20代後半から30代にかけてはエストロゲンの分泌量がピークになるだけでなく、ライフステージの変化に伴うストレスでホルモンバランスが乱れやすい時期です。
つまり、20代後半から30代にかけてはエストロゲンの分泌量の変化が大きく、PMSの症状も出やすくなるのです。*²
このことからPMSは別名「30歳代中期症候群」とも呼ばれています。
私はまさにコレ。20代前半の時は生理前の腹痛と食欲増加が中心だったけど、最近はイライラしたり悲しくなったり、精神的な症状が加わってさらに過ごしづらくなっちゃった…。
出産経験がある方は、出産を契機に女性ホルモンの分泌量が大きく変わるためPMSが悪化したと感じることも。
妊娠から出産までは女性ホルモンの分泌量が増加するのに対して、出産後は急激に分泌量が減るためです。
PMSの中でも、精神的な症状が重度の場合、「月経前不快気分障害(PMDD)」と診断されることがあります。
女性ホルモンのバランスを整える
女性ホルモンって分泌量が多ければ良いってわけじゃないし、年齢を重ねたら分泌量が変わって、今まで無かった症状が急に出てきたり、とても大変なんだね…。
女性ホルモンのバランスを自分で整える方法ってあるのかな。
まずは、ホルモンバランスの乱れを引き起こす「生活習慣の乱れ」「ストレス」を改善することが大切ですよ。その他には薬剤治療という方法もあります。
生活習慣を整える・ストレスを溜めない
女性ホルモンの乱れを防ぐには、まずは生活習慣を整えることが重要です。
下記を意識して取り組みましょう。
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栄養バランスの良い食事を摂る
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十分な睡眠時間を確保する
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適度な運動を行う
また、ストレスを溜めないように、リラックスできる環境を整えることも大切です。
薬剤で治療する
女性ホルモンの乱れが原因で、心身に不調をきたしている場合、薬剤での治療も可能です。
低用量ピル、漢方薬や、ホルモン剤を使ってホルモンバランスを整えていきましょう。
不調を感じている場所や、程度によっても使用する薬剤は異なるので、婦人科などのクリニックを受診し、自分にあったもので治療しましょう。
女性ホルモンの働きを理解して体調管理に役立てよう
女性ホルモンは、女性の生涯、生理周期内、そして日々の生活において、心と体に様々な影響を与えています。
また、その影響や時期は、人によって差があります。
女性ホルモンの働きや影響については、女性はもちろん、男性が把握しておくことも大切です。
女性ホルモンが、自分やパートナーにどのような影響を与えているか知り、その変化と上手に付き合えるようになりましょう。
女性ホルモンって働きものだね~!
私も女性ホルモンについて、なんとなく知った気になっていたけど、これだけ体に色々と影響しているホルモンだからこそ、おろそかにしたら病気や不調の原因になるんだね。
生活習慣に気を付けたり、薬剤でコントロールもできるってことも知れて良かった!クリニックに行ってみます。
女性ホルモンは女性の体と健康に欠かせないもの。だからこそ、女性ホルモンについて把握して、上手に付き合えるようになると良いですね。あやお大事に!
【参考/出典元】
*1 日本産科婦人科学会, 産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版, 2018
*2 日本産科婦人科学会(https://www.jsog.or.jp/citizen/5716/#:~:text=%E6%8E%92%E5%8D%B5%E3%81%AE%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8B,%E3%81%A8%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82) , 月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)
この記事を書いた人
綿来 美紀 TENGAヘルスケア社員(ディレクター)
大学時代よりウェブメディアのライターとして活動。 TENGAヘルスケア、iroha関連コンテンツサイトのSEO担当者として2024年2月に入社。
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あや、ごきげんよう!調子はどう?モヤピンはとーっても元気☆