子どもにセックスって何?と聞かれたら
今回のお悩み
子どもに「セックスってなに?」と聞かれました。
どう答えるのが正解ですか?
ちなみに子どもは小学校低学年です。
(30代女性)
専門家からの回答
染矢 明日香 NPO法人ピルコン理事長
NPO法人ピルコン理事長。子ども向け「セイシル」でもセイシルアドバイザーとして活躍。性の健康の啓発とセクシュアリティ教育(包括的性教育)について発信を行う。
関連記事を見る編集部からの回答
福田 眞央 TENGAヘルスケア社員
保健体育科教員として勤めた後に大学院に入り、ジェンダー学・性教育を専攻。2021年からTENGAヘルスケアに携わり、10代向け性教育WEBメディア「セイシル」を担当。
関連記事を見るタブーにしない性の話 ー思春期につながる大切な会話
「えっ、そんなこと聞かないで!」と動揺すると、子どもは「聞いちゃいけないことなんだ」と感じてしまい、罪悪感や性に対するタブー感を持つかもしれません。
まずは「よく聞いてくれたね」と興味を持ってくれたことを認めたり、「大事なことを聞いてくれてありがとう、嬉しいよ」と笑顔で伝えることで、子どもは安心して話を聞いてくれると思います。
親が性の話をタブー視せず、丁寧に向き合うことが、のちの思春期にも安心して相談できる関係づくりにつながると思うので、性教育のキッカケとして大事な会話にしましょう。
性のことでも、子どもとの会話をぜひ楽しんでほしいです。
正しい知識を理解度に合わせて伝えよう
聞いてきた子どもが理解できる範囲で端的に淡々と、真実を伝えることがポイントです。
もし深掘りされたら、「それはもう少し大きくなったらまた話そうね」と区切っても構いません。
以下の説明例を参考にしながら、子どもの年齢や理解度に合わせて、「どこまでを・どれを」話すか選んでみてください。
- セックスというのは、心も体も大人になった人が、とても仲良くなって、赤ちゃんをつくる(妊娠する)ためにすることだよ。
でも、赤ちゃんをつくるだけじゃなくて、お互いに「大切だよ」「大好きだよ」っていう気持ちを伝える、愛情のかたちのひとつでもあるよ。
- 女の人の体の中には「たまご(卵子)」という赤ちゃんのもとがあって、男の人の体にも「精子」という赤ちゃんのもとがあるよ。
このふたつが体の中で出会ってくっつくと、赤ちゃんになるための準備がはじまるよ。
- そのとき、男の人の体にあるおちんちんが、女の人の体の膣(ちつ)の中に入って、男の人の精子を女の人の体の中に届けるんだ。
そうやって、女の人の卵子と男の人の精子が出会えるんだよ。
- でも、うまく出会えないこともあるから、そんなときはお医者さんに手伝ってもらって赤ちゃんをつくることもあるよ。
- セックスは、お互いが「したい」と思ったときに、同じ気持ちで行うものだよ。
でも中には、無理やり行われたり、思いがけず妊娠してしまったり、病気になることもある。
そんなふうに、相手の気持ちを無視したり、傷つけたりすることは、間違ったことなんだよ。
子どもの言葉の背景を知ることが、守ることにつながる
子どもに「なぜそのことを知りたくなったの?どこでセックスという言葉を知ったの?」と聞いてみると、背景(テレビ・友達・SNS・漫画など)が分かり、説明のヒントになります。
場合によっては、性被害の可能性もあるので、ぜひ聞いてほしいと思います。
もしかすると思いがけず言葉を知ってしまって、ショックを受けているかもしれません。
また、もし聞かれてすぐに対応できない状況なら、「あとでゆっくり話そう」とその場では流して、「あの時はすぐに答えられなくて、ごめんね。急だったからびっくりしてうまく答えられなかったんだ。今から話せる?」と、落ち着ける状況で話しても良いと思います。
素敵な性教育の時間になりますように!
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肯定的に受け止め、学びにつなげられると◎
子どもがセックスについて尋ねてきたら、それはとても大切な学びのチャンス。
「疑問に思ったら親に聞けば教えてもらえる」と安心できる体験につなげていきたいものですね。
まず、お子さんが質問をしたのはどのような状況でしょうか。
人前であれば「いい質問だね。とても大事な話だから、ふたりでしようね」などと質問を受けとめつつ他の人がいないリラックスできる場所に移動することがおすすめです。
性はプライバシーに関わることだからです。
親がすぐに伝えるのが難しくても、「いい質問だね。今度一緒に調べてみようか」と言い、絵本や性教育の本を一緒に見てみるのもよいと思います。
性暴力や不適切な情報に触れている可能性もあるため、子どもが「セックス」という言葉をどこで知ったのか、その意味をどう考えているのかを落ち着いて確認してみましょう。
シンプルで分かりやすい言葉でポイントを伝えましょう
説明の仕方に唯一の「正解」はありませんが、考えていきましょう。
セックスにはいろんな意味や目的がありますね。
子どもを作るためだけではなく、愛情を表現するため、性欲を満たし気持ちよくなるため、相手を支配するため、相手とのつながりを確認するため、お金やモノとの交換などなど。
性器性交に注目がいきがちですが、実際はスキンシップにより多くの時間をかけているかもしれませんし、セックスする人の体の性が男女の組み合わせとも限りません。
英語では「性別」という意味もありますね。
あなたにとってのセックスの意味はどんなことでしょうか?
ただ、小学校低学年のうちは、シンプルで分かりやすい言葉で伝えていくことが大切です。
性器をくっつけて、男の人の命のもとを女の人の体に届けることで、赤ちゃんができることがあります。
といったポイントが考えられます。
家庭によって説明の仕方やタイミングはさまざまで、赤ちゃんの生まれ方や家族の形もいろいろあることを伝えておくと学びが深まります。
安全のために、
を伝えることも大切です。
一度で理解できるとは限らないので、あとから「あのとき聞いたこと覚えてる?」と確認して補足するといいでしょう。
質問を通じて、性教育について深堀りを進められると良いかも
子どもから「パパとママも?」「何回したの?」といった質問が出たり、成長と共に「赤ちゃんをつくるときは必ずしないといけないの?」「気持ち悪い」といった反応が出ることもあります。
そんなときは「そう思ったんだね」と受けとめながら、
などを伝えるとよいでしょう。
なお、性教育はセックスのことを教えるだけではありません。
自分だけが自由に見たり触ったりしていい大切な場所であるプライベートパーツ(性器、おしり、胸、口等)とそのケア、月経や射精、その他の二次性徴などの体の変化、同意、性情報との関わり方、ジェンダーや多様な性のあり方についても伝えていけるといいでしょう。
思春期には、避妊・中絶、HPVや性感染症、ボディイメージ、恋愛のことなど、更に深堀りして話していくことも考えられます。
研究でも幼児期からの適切な包括的性教育が性的虐待のリスクを減らすと分かっています。
インターネットや友達からの不確かな情報やAVよりも、身近で信頼できる親や教育機関、地域で性について情報を得られることが、子どもの安心と健やかな成長につながります。