女性の尿失禁まるわかり 骨盤底筋トレーニングがおすすめ
体の構造上、女性にとって尿失禁はとても身近な問題で、多くの方が悩んでいます。
今回は女性の尿失禁について、その実態や原因、対策などの基礎知識を解説します。
尿失禁の対策や予防をしたい方は、ぜひ適切な知識を身に着けましょう!
注)「ちつ」の解剖学的に正しい表記は「腟」ですが、この記事では一般的な表記である「膣」を使用します。
この記事の監修
深~いため息ついちゃって、どうしたの?
聞いてよモヤピン。この間、仕事で体育の授業の時、ジャンプしたら少し漏れちゃったんだよね。
えー!授業前にトイレ行くの忘れちゃったの?
ちゃんと行ってるよ!それなのに急に漏れちゃったんだよね。おりものシートを付けてたからなんとか下着は汚れずに済んだけど、また起きたらって思うと不安だよ。一体何が原因なんだろう…。
お困りのようだネ!あやの尿失禁の原因は恐らく「骨盤底筋」にあるネ。
お!骨盤底筋の妖精ケーゲルじゃん。おしっこと筋肉が何か関係あるの?
YESモヤピン!関係大ありさ。女性の尿失禁は殆ど骨盤底筋の問題と言っても過言じゃないんだよ。今日はミーが女性の尿失禁について解説してあげるネ。
尿失禁の定義
日本泌尿器科学会によると、尿失禁とは「自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうこと」と定義されています*¹。
尿失禁はデリケートな問題で、なかなか周囲や医療機関に相談できず、適切な改善行動に辿り着きづらいという特徴があります。
また、単に不快感や恥ずかしさ、臭いの問題があるだけでなく、常に尿失禁の不安を抱える生活となり、外出を控えたり、遊びもアクティブに楽しめなくなるなど、生活の質(QOL)の低下に繋がります。
めっちゃわかるー!一度尿漏れになってから、「また漏れちゃったらどうしよう…」って不安が消えないんだよね。
尿失禁は命に関わる問題じゃないんだけど、ヘルシーな生活を送る上ではとても大きな問題なんだよネ。
20代でも5人に1人は女性の尿失禁の経験あり
そういえば、尿失禁って少し年齢が上の人がなる症状じゃないの?私まだ20代なんだけどなぁ…。
一般的にはそのイメージだろうけど、実は若くても悩んでいる人は多いんだよ。
上記は、TENGAヘルスケアが日本人女性(20-60代、21,104人)を対象に実施した、思春期以降での尿失禁の経験率・有症率の調査結果です。
全年代で見ると、尿失禁の経験率は約35%(人口換算で約1,340万人)、月1回以上症状がある割合は約11%(約430万人)でした。
年代が上がるにつれて、経験率も有症率も上昇しますが、20-40代でも、経験者・有症者は少なくありませんでした。
※経験率、有症率の割合は、他の調査でもほぼ同等*²⁻⁹。
ただ、気恥ずかしさから「本当は症状あるのに報告していない人もいるのでは?」と考える専門家の意見もあり、実際の経験率・有症率はもっと高い可能性もあります。
グラフを見ると、20代でも5人に1人は尿失禁を経験しているんだ。予想以上に多いのね。
悩んでいる人はそこら中にいる…ってコト⁉
YES!「尿失禁」はイメージよりも、実はずっと身近な問題なんだよー。次は尿失禁の種類を一緒に見ていこう!
女性の尿失禁には3つの種類がある
女性の尿失禁は主に3種類に分類されます。
種類毎に原因や改善方法が異なるので、自分がどのタイプかの把握は非常に重要です。
1.腹圧性尿失禁
まず、最も多いタイプは「腹圧性尿失禁」です。
女性の尿失禁の約50%は腹圧性尿失禁に分類されます。
腹圧(お腹の中の圧力)に、後述する骨盤底筋の筋力が負けて、尿道が開いて漏れてしまいます。
骨盤底筋の筋力不足が主な原因です。
腹圧性尿失禁が発生しやすいタイミング
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咳やくしゃみ
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大笑いや大声を出す
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重い荷物を持つ
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運動をする(特に縄跳びなどの上下運動)
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立ち上がる瞬間
私がなったのも腹圧性尿失禁かな?縄跳びをしている時に漏れちゃったんだよね。
まさに腹圧性尿失禁の症状だネ。ジャンプした時に膀胱に圧力がかかったわけさ。
モヤピンは今日、上の行動を全部やったよ。日常動作ばっかりだねぇ。
2.切迫性尿失禁
次に多いタイプは「切迫性尿失禁」で、約30%がこれに該当します。
切迫性尿失禁は、膀胱の異常収縮による失禁です。膀胱が急に収縮すると、それが原因で急に強い尿意を感じ、トイレに間に合わず漏らしてしまいます。
この膀胱の異常収縮(もしくは異常知覚)は「過活動膀胱」と呼ばれる状態です。
尿失禁まで至らずとも、過活動膀胱は頻尿の大きな原因でもあります。
過活動膀胱の主な原因は、加齢等によるホルモンバランスや自律神経系の乱れで、女性だけでなく男性でも少なくありません。
切迫性尿失禁が発生しやすいタイミング
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水流の音を聞いたとき
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冷水で手を洗ったとき
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トイレに入ってからパンツを下すまでに間に合わず
これは私の友達にも多いかも。映画見に行ったとき、「最近急にトイレに行きたくなるから不安」って言ってたよ。
ワオ!切迫性尿失禁だと急に強い尿意が発生することがあるから、トイレのタイミングに困っている人も多いネ。
なんか聞いているだけでソワソワしてきちゃうな。ちょっとトイレ行ってくるよ(ソワソワ)
3.混合性尿失禁
最後は「混合性尿失禁」で、これは腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が併発しているケースです。
混合性尿失禁は全ての尿失禁の約20%を占めます。
腹圧性尿失禁も切迫性尿失禁もどっちも混ざっている場合もあるの!?
実はそうなんだよ〜。その場合はどちらも一緒に対策していく必要があるネ。
前述した腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁のそれぞれの割合と合計すると、女性の尿失禁の原因分布は以下のようになります。
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骨盤底筋の筋力不足/低下で生じている失禁:約70%
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膀胱の異常収縮(過活動膀胱)で生じている失禁:約50%
男性よりも女性に尿失禁が多い3つの理由
そういえば女性は尿失禁しやすいって聞いたけど、それはどうして?
ズバリ、男女で体の構造が違うからさ。その理由を3つ解説するよ。
1.尿道の長さ
男性と比較して、女性の尿道の長さは約1/4です。
尿道が短いと、膀胱の圧力に尿道の閉鎖圧が負けやすく、結果抑えがききにくくなります。
2.骨盤底の構造的不安定さ
男性と比較して、女性は骨盤底を貫く穴の数が多いこと、また単純に筋力が弱いことから、骨盤底が不安定になりがちです。
骨盤底が不安定だと、骨盤底筋による尿道の閉鎖機能が不十分になります。
また骨盤内での膀胱・尿道の支持も不安定になり、これも尿道の閉鎖不良、そして尿失禁に繋がります。
3.妊娠・出産による骨盤底筋の損傷
妊娠と出産も尿失禁の原因となります。
妊娠中は、胎児や胎盤、羊水などで5 kgを超える重量が骨盤底部にかかり、負荷となります。
また、経膣出産の場合、胎児の通過によって骨盤底部が引き延ばされます。この際、骨盤底筋や周辺組織には、必ず何かしらの損傷が生じます。
損傷の程度は胎児が重い程大きく(3,500 g以上でリスクが高くなる*¹⁰)、また出産を重ねることで損傷も累積していきます。
この損傷は、産後数十年経過してから、古傷として尿失禁の原因となる場合もあります。産後そこまで漏れていなかった人でも、一度でも出産を経験した人は要注意です。
男女でこんなに差があるんだね〜。そう言えば、あやとしょうたがデートしている時、あやの方がよくトイレに行ってるね。
しょうたのことがちょっとうらやましくなってきたわ。尿道の長さはどうしようもないけど、骨盤底筋は何か対策の余地があるのかな?
OK!じゃあ最後に尿失禁の対策方法を紹介していくよ!
おすすめの対策は骨盤底筋トレーニング
女性の尿失禁には、その原因に応じて様々な対策方法がありますが、その中でも第一選択肢となるのが「骨盤底筋トレーニング」です。
「骨盤底筋トレーニング」は、「骨盤底筋体操」や「ケーゲル体操」、「腟トレ」と呼ばれることもあります。
骨盤底筋トレーニングによって骨盤底筋の筋力が向上すると、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁の両方で改善・予防が期待できます。その効果はガイドラインでも認められています*¹¹。
道具も不要で手軽に始められるため、緊急度が高くない場合は、まずは骨盤底筋トレーニングに3ヵ月間取り組みましょう。
それでも改善が見られない場合や、骨盤底筋の動かし方が分からない場合は、泌尿器科やレディースクリニックの診察が推奨されます。
尿漏れに困ったらまず最初にこれだよ。トレーニング方法の解説動画もあるから見てみてネ。
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正しい理解とケアから始めよう
女性の尿失禁の基礎知識を紹介しました。
女性にとって、尿失禁は身近な存在で、誰しもが直面する可能性があります。尿失禁の基本的な仕組みを抑え、適切に対処できるようにしましょう。
私だけじゃなくて、おおぜいの人が悩んでるってわかって、少し気が楽になったわ。私の場合、トレーニングで対策できそうだし。
ナイス!解説した甲斐があったよ。骨盤底筋トレーニングには、尿失禁だけじゃなく他にも良い効果があるから、ぜひ継続してやってみてネ。
トレーニングで対策したら、安心して二重跳びだってできちゃうね⭐︎
【参照/参考】
*1 日本泌尿器科学会HP
*2 本間他, 2003, 排尿に関する疫学的研究, 日本泌尿器科学会誌,
*3 森他, 2011, 若年女性及び高齢女性の骨盤底筋機能と腹圧性尿失禁の関連, 第46回日本理学療法学術大会抄録集
*4 中尾他, 2003, 就労女性の尿失禁の実態と腹圧性尿失禁の危険因子に関する分析, 山口医学
*5 ロリエ, 2017, 20-40代女性へのアンケート調査
*6 花王,2017, 軽失禁に関する意識・実態調査
*7 P&G, 2019, 日本女性20代から60代40,000人に聞く, UI(尿もれ)実態大規模調査
*8 加藤他, 1986, 就労女性における尿失禁の実態調査, 日本泌尿器科学会誌
*9 道川他, 2008, 中高年者における尿失禁に関する調査, 日本公衆衛生雑誌,
*10 関口由紀, 2017, ちょびもれ女子のための「あ!」すっきり手帖, 主婦の友インフォス
*11 日本排尿機能学会/日本泌尿器学会, 2019, 女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]
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