妊娠のために精子の質は重要ですが、実は採取の方法はその質に影響するのです。

　今回は、より良い精液を得るための、採取の注意点を解説します。

この記事の監修

今井 伸 医師

SRHケアクリニック静岡 院長

生殖医療（男性不妊・がん生殖）、性機能障害、男性更年期障害（LOH症候群）を専門とする。

泌尿器科医
性機能専門医
生殖医学会生殖医療専門医
性科学会認定セックス・セラピスト専門医

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この前やった精液検査、結果がイマイチでさー。
実は来週もう一回検査することになったんだよ。
今度はいい成績出したいから、アドバイスとか教えてよ！

何か、の〇太くんみたいだね。
まぁモヤピンはよくわからないから、精子のことならセイシローに聞いてみよっか。

そうかそうか。
次の精液検査のために、精子の質をサクッと上げたいんだな。
検査のために質を上げるというのは何かちがう気もするけど、今後役立つことも期待して、精液の質UPに繋がる採取方法について解説しよう。

おぉ、セイシロー！
キミはなんて頼りになる奴なんだ。

ただし、精液の質向上は、生活習慣の改善がメインだから、そこは勘違いせずに聞いてくれよ。

適切に精液採取をするべき理由

　精液採取の目的は、主に「精液検査」と「不妊治療」の二つです。

　現状にそくした治療方針立てるため、また治療中であれば妊娠率を高めるために、適切な方法で精液を採取することは重要です。

精液採取は自宅と病院内実施の2パターンで、共通の注意点もあれば、異なる点もあるんだ。
その辺りも踏まえながら解説していくよ。

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精液採取の注意点　- 採精前 –

まずは、採取する前の注意点です。

採取前には手洗い・シャワーを

　採取後の精液内で雑菌が繁殖すると、精子の死滅や運動率の低下に繋がります。

　なので、採取前には手洗い、また可能であればシャワーを浴びて、手指と陰茎周辺を清潔にしましょう。

　院内採取の場合も、事前に自宅でシャワーを浴び、採取前には手洗いできると良いでしょう。

院内採取ではイヤホンとオカズの用意がおすすめ

　院内採取では、廊下の雑音が気になったり、用意されているオカズが微妙だったりと、なかなか採取に集中できないことがあります。

　また、いざ採精室に入ると、他人が使ったヘッドホンやオカズ（エロ本やDVD）の使用に抵抗を覚える場合もあります。

　男性は集中しないと射精できない生き物です。

　「射精なんて簡単だろう」と高をくくらず、イヤホンとオカズ（スマホに入れておく）など、集中するための準備をして臨みましょう。

採精室に入った男性が1時間以上こもってそれでも射精できず、その日の治療はキャンセルになった、という話もたまに聞くよ。

精液採取の注意点　- 採精中 –

次に採取中の注意点です。

気持ちよく射精する

　まず重要なのは、「射精時の快感が強いと、精液の質が向上する」ということです。

　これは、マスターベーションとセックス（採取用のコンドームを使用）で採取された精液を比較した研究で、後者が良好であったことから示唆されました*¹*²。

　また射精の仕組み的にも、快感の高まりに応じて、精子が射精するための位置に移動するので、ある程度快感を高めた方が良いと考えられます。

　より快感が強く、興奮が高まった状態で射精した方が、中途半端な射精よりも精液所見が良好になるということです。

気持ち良く射精すればいいんだな。
それは得意だぜ！

セックスやフェラチオでの採精は控える

　快感が強い方が精液所見が向上すると説明しましたが、実際にセックスでの採取は控えましょう。

　これは、膣内細菌の混入や、精液の取り逃し（特に最も濃度が高いと考えられている最初に射精される部分）が原因で、精液の質低下の懸念があるためです。

　実際に、マスターベーションとセックス（射精の直前に抜いて外で射精）で採取した場合、後者で質の低下が確認されました*³。

　同様の理由で、フェラチオや、唾液を潤滑剤（ローション）代わりに使った採取も控えましょう。

コンドームの使用は控える

　ここまでの話を聞いて、「じゃあコンドームを着けて採取すればいいんじゃない」と思った方、それも注意が必要です。

　なぜなら、一般的なコンドームの内側には、殺精子剤や製造過程での物質が付着しており、これらの影響で精子が死滅してしまうからです。

　どうしても、セックス（でコンドームを使用して）じゃないと射精できないという人は、まずは医師に相談してみましょう。

精液はこぼさず全量採取する

　検査でも治療でも、精液はこぼさず採取することを心がけましょう。

　特に、射精の最初に出る精液は最も精子濃度が高いので、この部分をこぼさないように要注意です。

　また、射精後の尿道に残った精液も、陰茎の付け根から尿道口にかけて、手で絞り出すようにして採取しましょう。

精液の取りこぼしは、もっともよく挙げられる採取の失敗なんだ。

そうそう、オナニーでティッシュで受け止めるのと、採取用のプラ容器で受け止める感覚はちがうんだよね。
初めてだと失敗する人、少なくないと思うな。

不安がある人は、事前に自宅で練習してみるとコツが掴めると思うよ。

採精容器

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精液採取の注意点　- 採精後 –

　採取までしっかりできても、まだ油断は禁物。

　その後の管理が悪いと精子は劣化するので、採取後の注意点を紹介します。

採取容器のフタはすぐに閉める

　精液量は多い人でも7～8 ml程度で、そのまま放置していると、すぐに乾燥して精子は死滅してしまいます。また、空気中の細菌が混入する可能性もあります。

　なので、採取後はすぐに容器のフタを閉めましょう。

あと、自宅で採取後フタの閉まりが中途半端で、クリニックへの運搬中にこぼれてしまう話もたまに聞くな。

カバンの中でこぼしちゃうってことだよね。それは大惨事だな…。

運搬温度に注意する

　精子の適温は室温（約25℃）ですが、それよりも暑い、もしくは寒い環境では、精液の質は急速に低下します。

　特に冬は精液を運搬運搬時の保温が重要です。

　実際に、保温しないで運搬した場合、精液所見の低下によって、より高度な治療が必要になる確率が上がったという報告もあります*⁴。

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SEED POD

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適切な採取方法で少しでも精子の質を上げよう

今回解説した精液採取の注意点を以下にまとめます。治療や検査のために、適切な採取を心がけましょう。

（〇：注意するべきポイント）

しょうたが精液検査を受けたクリニックは、自宅で採取するタイプだったな。

そうだね。
俺は採取では手間取らなかったから、次の検査では清潔にしてから採取することと、持って行くまでの保温に注意するよ。

保温するならモヤピンが被ってるタイツを貸してあげるよ。
これに包めば温かくて精子に良さそう。

あ、ありがとう（コイツ、嫌じゃないのか…）。
でも専用の保温器があるし、そっちを使うよ。

うんうん、やれるだけのことをする姿勢は感心だぞ。
ただ、精液所見の改善は、日頃の生活習慣が重要だから、そっちも忘れずにな。

この記事を書いた人

牛場 栄之 TENGAヘルスケア社員（編集長）

大学・大学院では神経科学を専攻、おとなセイシルでは性科学や性機能学、生理学の分野を主に担当。2016年に株式会社TENGAへ入社、以来TENGAヘルスケア製品の研究開発を担当。

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