賢者タイムに寂しさを感じる
今回のお悩み
セックスの後、彼が急に素っ気なくなることにモヤモヤしています。
おそらく「賢者タイム」なのだと思いますが、私はまだ余韻があって寄り添いたい気持ちがあるのに、急に冷たくなると 「性欲を満たしたら終わり?」 と寂しくなってしまいます。
男性は賢者タイムのとき、実際どんな気持ちでいるのでしょうか?
(30代女性)
専門家からの回答
森林 原人 AV男優
日本で最も活躍するAV男優の一人。出演本数2万本以上。最難関国立中高一貫男子校を卒業してAV業界に進んだ異例の経歴を持つ。最近は出演業を減らし、性愛に関わる事象の経験、研究、考察を通して、その本質を再定義、発信することに注力している。
関連記事を見る編集部からの回答
福田 眞央 TENGAヘルスケア社員
保健体育科教員として勤めた後に大学院に入り、ジェンダー学・性教育を専攻。2021年からTENGAヘルスケアに携わり、10代向け性教育WEBメディア「セイシル」を担当。
関連記事を見るセックス後の「賢者タイム」への戸惑い
私も昔付き合っていた彼が、セックスの後にかなりクールダウンしてしまうタイプで、
「え、さっきまではあんなに甘えてきたのに?」
「満足したら終わりですか?」
と、あなたと同じように賢者タイムが寂しく、そして私は少しイラッとしてしまったことが何度もあります。
でも、いろいろ友達と話したり、男性側の体験談を聞いたりする中で分かったのは、彼が冷たく見えるからといって気持ちがないわけでは全然なく、ただ身体の反応として一瞬でスン…と落ち着いてしまう男性が多いということでした。
こちらに余韻がある分、寂しく感じるのは自然なことなんですよね。
気持ちを軽く伝えるだけで、お互いがラクになることも
私は思い切って「数分だけでいいから、終わったあと抱きついてくれると嬉しい」と伝えてみたところ、彼は「そうだったんだ、気づかなかった」と言ってくれて、すごくラクになりました。
「気づいてよ!」とも思いましたが、「察してアピール」ではなく言葉にするのがおすすめです。
男性自身も、急に冷静になる理由をうまく説明できないことが多く、悪気があるわけではないみたいです。
あなたの寂しさは我慢しなくていい感情ですし、「終わったあとの時間も大事にしたい」と素直に伝えるだけで、案外お互いが居心地よく過ごせるかもしれません。
そうやって話し合える関係を築けるのも、一つの「相性の良さ」なのだと思います。
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射精後は体のモードが切り替わる
「寂しい思いをさせて、すまなかった…」勝手に全男性を代表して、心からお詫びします。
そのうえで、ちょっとだけ男性側の事情も説明させてください。
男性が性行為をしているとき、脳でドーパミンという「報酬系」の物質がたくさん動いています。
ドーパミンは「快楽そのもの」だけでなく欲求や集中を強くする物質でもあります。
そして、オーガズム〜射精の後には、プロラクチンというホルモンが上がりやすいことがわかっています。
プロラクチンは脳の下垂体から分泌されるホルモンで、満足感や「もういいや」という感覚、性的な興奮の一時的なブレーキ、に関わっていると考えられています。
ただし、「プロラクチンが上がる → だから必ず賢者タイムになる」とまで言い切れるほど、研究が決着しているわけではありません。
賢者タイムには、自律神経の変化や別のホルモンも絡んでいると言われています。
ここで僕が強調したいのは、興奮や快楽の高まりは「相手の存在」の影響を強く受けるけれど、賢者タイムのスイッチは「身体の自動反応」の側面が大きいという点です。
だから、セックスの後にそっけなくなってしまう男性の多くは、本気であなたを鬱陶しく思っているわけではなく、ただ、体のモードが切り替わってしまって、残念な行動になっているだけだったりします。
賢者タイムを感じないセックスもある
ここまでが、ざっくりとした医学寄りの説明です。
この先は、僕自身の経験を含んだ話をします。
僕自身、セックスで射精後もほとんど賢者タイムを感じない時があります。
そのようなセックスでは、僕は、行為中も激しく興奮している感じではなく、穏やかで温かい快楽で、「時間がゆっくり流れている」ような感覚の中にいます。
おそらく脳内では、ドーパミンよりも、オキシトシン(相手との絆や安心感を強めるホルモン)とセロトニン(気分の安定や満ち足りた感じに関わる物質)の働きが強い状態に近いのだと思います。
射精後に分泌されるプロラクチンは、オキシトシンやセロトニンを抑制するわけではないから、上記のような状態で射精を迎えた場合、賢者タイムをほぼ感じないという理屈です。
このタイプの行為のとき、僕にとってのピークは「射精の瞬間」ではなく、むしろその後です。
抱き合って、2人のことを話して、「この感じは、この2人だから生まれてるんだよね」というちょっとした“選ばれ感”を味わって、「広い宇宙の中で、今は2人きりだな」としみじみする。
こういうセックスを知ったのは、40歳を過ぎてからです。
それは、恵まれた出会いがあったこと、自分の内面と向き合う練習をしたこと、「動物的な発情や興奮」とは別次元の快楽が人間にはあると気づけたこと、このあたりの結果だと思います。
「相手をコントロールしないこと」を大切に
ここからはあなたへのメッセージです。
多くの男性は、「他者に身を委ねて無防備になること」が怖いです。
興奮しているときは勢いで突っ走れるけれど、行為が終わってしまうと、急に自分の弱さ、みっともなさ、ちっぽけさ、関係が強固になり相手に依存してしまう怖さがせり上がってきて、逃げるように自分の世界にこもってしまいます。
賢者タイムがないセックスの前提は相手をコントロールしようとしないことです。
「もっとこうして」と責めるのではなく、かといって、自分を抑えて我慢するのでもなく、あなたはあなたのまますぐそばにいてください。
このスタンスを続けていると、あなたと向き合う勇気を持った男性に出会うか、いま隣にいる男性が、少しずつその勇気を育んでいくかになります。
そのときはどうか、ゆっくりと、穏やかに、2人で「行為と感覚」に身を委ねてみてください。
自分の殻に閉じこもる“賢者”ではなく、無防備さを引き受けられる“勇者”とともに。